第三話 ルーリッド村
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「失礼します、シスター・アザリア。ユージオです」
どうやら老婦の目にユージオは入っていなかったらしい。
訪ねてきたのがユージオだと分かったからか、シスターの目元が幾分か穏やかになる。
「お久しぶりですね、ユージオ。とても、大きくなりましたね」
「シスターも、お元気そうで何よりです」
同じ村に住んでいるのに久しぶりとはどいうことなのか。
気にはなったが口には出さず胸に留めておく。
「それで、今日はどうしたのですか?」
「……実は彼と森で出会ったのですが、ベクタの迷子で記憶がないんです」
シスターの眼鏡の奥の瞳が少しばかり鋭くなった。
そして俺に顔を向ける。
「名前は、何と言うのですか?」
鋭い眼から威圧を感じながら、なんとか声を絞り出す。
「カガトです」
シスターは俺の前に立ち、言葉をつむぐ。
「辛かったでしょう、カガト。何もわからず、森の中で一人ぼっちで。安心してください、私達はあなたを家族として迎え入れる用意があります」
そしてシスター・アザリアは気難しげな顔を少し緩ませる。
自分の目頭が熱くなるのを感じた。
「ありがとうございます、シスター」
「よかったね、カガト」
「ああ お前のおかげだ。ユージオ」
もしユージオが居なかったら、俺は今頃森の中でぶっ倒れていただろう。本当にユージオには頭が上がらない。
少し談笑した後、ユージオが帰り支度を始めた。
「それでは、僕は帰ります」
「ユージオ。彼をここに連れてきてくれてありがとう。また昔のように、教会に遊びに来てください」
「……はい、シスター。それじゃあ僕は帰るね、カガト。明日の朝、出来たら中央広場に来てね」
「わかった。明日の朝に中央広場な」
「失礼しました」と最後に告げ、ユージオは足早に帰って行った。
「ではカガト。もうすぐ夕食の時間です、食堂に向かうとしましょう」
そう言われ、シスターの後に続いて食堂に向かうのだった。
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