第三話 ルーリッド村
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てくれよ」
そこまで食い下がった俺に、彼は溜息を吐きながら頷いた。
「わかったよカガト。でも、僕の教えは厳しいから覚悟するんだぞ」
「了解です。ユージオ先生!」
二人でひとしきり笑った後、午後の仕事にとりかかった。
◆
今日の分の天職を終え、教会へと向かう道すがらユージオに話しかけた。
「なぁ、ユージオ」
「どうしたの?」
「ここに来る途中、村を襲う人間はいないっていってたよな。禁忌目録に反するから」
ユージオは怪訝な顔をする。
「ならなんで衛士なんて天職があるんだ?」
「決まってるじゃないか。闇の軍勢から村を守るためだよ」
「闇の軍勢?」
「ほら、見えるだろう、あそこ」
ユージオの指差す方向に眼を凝らす。遥か彼方にうっすらと連なる純白の山脈が存在していた。鋸のように険峻な稜線が、視線の届く限り左から右へと続いている。
「あれが、《果ての山脈》。あの向こう側に、ソルスの光も届かない闇の国があるんだ。闇の国には、ゴブリンとかオークみたいな呪われた亜人や、いろいろな恐ろしい怪物……それに、暗黒騎士たちが住んでいる。もちろん、山脈を守る整合騎士がそいつらの侵入を防いでいるけど、ごくたまに地下の洞窟を抜けて忍び込んでくる奴がいるらしい。僕は見たことはないけどね」
「ホォ」
「それに、公理教会の言い伝えによれば……千年に一度、ソルスの光が弱まった時、暗黒騎士に率いられた闇の軍勢が、山脈を越えて一斉に攻めてくるんだって。その大戦では、村の衛士たちや、少し大きい街の衛兵隊、それに央都の帝国軍までが整合騎士に率いられて怪物たちと戦うんだ」
「なるほどな。衛士っていうのが素晴らしい仕事なのは分かった。だが、さっきのジンクとかいう衛士の態度は無いんじゃないか? ユージオのことを見下して、嘲笑して。あれが衛士のやることだとは思いたくないね」
「まぁ、彼は昔からあんな感じだからね。もうどうしょうもないんじゃないかな」
「だが、あれはさすがにやりすぎ……」
「ほらほら、着いたよカガト」
促された通りに前を見ると、かなり大きめの建物が目の前に現れた。古びたその建物はレンガを使っているらしく、所々欠けているところもある。
細長い塔の先端に、十字と円を組み合わせたようなシンボルが見て取れることからここが教会なのだろう。
少し大きめの扉の前に立つと、ユージオは遠慮がちにノックをした。
すると、中から返事がしたのと同時に扉が開く。
「何か、御用?」
出てきたのは、厳格な印象を受ける一人の老婦だった。
修道服らしき衣服を纏っていることから、おそらくこの人がシスター・アザリアなのだろう。
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