第三話 ルーリッド村
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人は……?」
「………幼馴染だったんだ。同い年の、女の子で……小さい頃は、朝から夕方までいつも一緒に遊んでた。天職を与えられてからも。毎日お弁当を持ってきてくれて……。でも、六年前……僕が十一の夏に、村に整合騎士がやってきて……央都に、連れて行かれちゃったんだ……」
整合騎士っていうのが、所謂法の番人というヤツなのだろう。
「僕の……せいなんだ。安息日に、二人で北の洞窟を探検しに出かけて……帰り道を間違えて、果ての山脈の向こう側に抜けちゃったんだ。彼女がそこでつまずいて、外の地面に掌を突いてしまって。禁忌目録で闇の国には足を踏み入っちゃいけなかったから、そのあとすぐ整合騎士が村にやってきて……。たったそれだけのことで、みんなの前で彼女を鎖で縛り上げた……」
ユージオの手の中で、食べかけのパンがくしゃりと潰れた。
「……助けようとしたんだ。僕も一緒に捕まってもいいから、騎士に斧で打ちかかろうと……でも、手も、足も、動かなかった。僕はただ、あの子が連れていかれるのを、黙って見てた……」
まるで、かつての自分を見ているようだ。大切に想っていた存在を理不尽に奪われ、何も出来なかった自分を嫌悪する。
ユージオは今、かつての俺と同じ場所に居るんだろう。そして、悩み、もがき、苦しんでいるのが痛いほどわかる。
けれど俺にはユージオに共感できるなんて言葉を、口が裂けても言えなかった。何故なら俺は、そこから最悪ともいえる選択肢を選んでしまったのだから。
「……その子は、どうなったんだ………?」
「整合騎士は、審問ののちに処刑する、って言ってた……。でもね、カガト、僕は信じてるよ。きっと生きてるって」
一拍置いて。
「アリスは、央都のどこかで、必ず生きてる……」
『アリス』。俺はその名を心に刻み込ませる。
「ごめんね、なんか暗い話聞かせちゃって……」
「いや、いいさ。ユージオが彼女のことを大事に想ってたのが、伝わったからな」
「……ちょっと恥ずかしいな」
そこでユージオは少し照れたように笑う。
「ああ、あとパンありがとな。ユージオがいなきゃ、餓死するところだった」
「そんな大げさな。じゃあ僕は、午後の分を終わらせないといけないから」
そう言いながら身軽な動作で立ち上がるユージオに向かって、俺は尋ねた。
「なぁ、天職って他の人が手伝っても良いのか?」
「天職を誰かに手伝ってもらっちゃいけない、なんて掟はないけど……」
「なら、俺も手伝うよ。パンのお礼だ」
「ええ? でも、案外、難しいんだよ、これ。僕も始めたばっかりの頃は、まともに当てることさえ出来なかったんだから」
「じゃあ、俺がまともに当てられるように、ユージオが教え
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