暁 〜小説投稿サイト〜
キリトである必要なくね?〜UW編〜
第二話 アンダーワールド
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ける。

「えー、こんにちは」

 木こりの少年は驚いたように少し跳ね、すぐさま振り向いた。若葉色の瞳が困惑気味に揺れ動く。
 俺は出来るだけにこやかな顔で問いかけた。

「スタッフの方ですか?」

 彼の瞳がさらに困惑の色を深める。これはミスったかと思っていると、少年はおもむろに口を開いた。

「……あの、すたっふって何ですか?」

 これはかなり雲行きが怪しい。さっきの自然な受け答えからNPCではないのだろうが、さりとてこの世界を管理している《RATH》の人間だとも思えない。
 だとするならば、おそらく彼は俺と同じテストプレイヤーなのだろう。そして彼は記憶の制限を受けていて、この世界の住人になりきっている。けれど俺の場合、何らかの不具合で記憶の制限が完全ではなかったのだ。

 となると、ここは警戒心持たれないように行動した方が良さそうだ。

「あー、悪い間違えた。出口を聞きたかったんだけど、口が回らなくて」

 そんな即バレするであろう嘘を、少し顔を下に向け彼の目線に合わせながらつく。

「確かにこの森は深いですからね、道を知らなきゃ迷って当然ですよ」

 彼の純粋さがとても有難かった。

「でも、どうしてこんなところに居るんですか? うちの村以外でこの辺りに人が住んでいるところなんて、なかったと思うんですけど……」

「あ、ああ、実は自分でもよく分からないんだ。気付いたらこの森に倒れてて」

「ええっ……じゃあ、今まで住んでた町とかも………?」

「さっぱり」

「驚いたなぁ、《ベクタの迷子》か、噂には聞いてたけど……」

「ベクタの迷子?」

 聞きなれない言葉の羅列に思わず聞き返す。

「ある日突然いなくなったり、逆に森や野原に突然現れる人を、僕の村じゃそう呼ぶんです。闇の神ベクタが、悪戯で人間をさらって、生まれの記憶を引っこ抜いてすごく遠い土地に放り出すんです。僕の村でも、ずーっと昔、お婆さんが一人消えたらしいですよ」

「へぇ、だとしたら俺もそうなのかもしれないな」

 そんな話があるのなら乗っかってしまった方が、後々のためになりそうだ。

「あ、なら僕の村に来ませんか? 寝るところがないのなら、シスター・アザリアに事情を話せば貸してくれるかもしれませんし」

「それは有難いな。実は寝床をどうしようか悩んでたんだ」

「あぁ、でもすみません。すぐに村に案内したいんですけど、まだ仕事が残っていて……。まだあと四時間ぐらい掛かるんです」

「そのぐらいなら全然待つよ。君は命の恩人なんだから」

「ありがとうございます。それじゃあ、しばらくそこで座ってください。あ……まだ、名乗っていませんでしたね」

 彼は右手をぐっと差し出し、続けた。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ