第一話 始まり
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?」
何でこの人はさらっと重い話を捻じ込んできたんだ。隣でパソコンを弄ってた研究員が驚いてるぞ。
「あ、そういえば。一昨日、君を訪ねてきた人がいたッスよ」
「俺を訪ねてきた? 誰ですか?」
「いや、名は名乗らなかったッスね。スーツを着てたサラリーマン風の男だったッスけど。彼は君と『あのゲームの知り合いだ』って言ってたッスよ」
あのゲーム。
そう濁されるゲームなんて、『ソードアート・オンライン』をおいて他にないだろう。
《SAO》と略されていた、世界初のVRMMORPG。
その実態は多くの人間の人生を狂わせた、狂気のデスゲーム。
その地獄でサラリーマン風の男は俺と知り合いだったらしい。けれど、俺に思い当たる人間はいない。なにせ、仲の良かったヤツは全員もうこの世にいないのだから。
「思い当たる人は居ませんね。本当に俺を訪ねてきたんですか? その人」
「たぶん間違いないッスよ。なにしろ彼、君を『カガト』くんって呼んでたッスから」
「……たしかにそのプレイヤー名を知っているということは、俺とあっちで知り合いだったのかもしれませんね。でも会う気はないですよ。一年半も前のことだし、あまり思い出したくありませんから」
そうだ。あれは過去のことだ。
もう、終わったことなんだ。
「まぁ、いきなり訪ねてくるなんてどう考えても不審者ッスからね。安心していいッスよ。ここには居ないって言っといたッスから」
「ありがとうございます。そういえば、今何時ですか?」
「今九時を回ったとこッスけど」
「じゃあ、俺そろそろ帰ります。明日ちょっと朝早いんで」
そう言いながらサイエンス・フィクションに出てきそうな厳ついマシンである《STL》から降りた。
「了解ッス。給料はいつもの口座でいいッスか?」
「はい。そこにお願いします」
「あと、衣服は隣の部屋に置いといたッス。無くなったものがないか確認してから帰るッスよ」
「わかりました」
そう返事をし扉に向かって歩く。
「気を付けて帰るッスよ〜」
「はい。お疲れさまでした」
そう最後に研究員の方々に声をかけ、隣の部屋に向かった。
◇
冷房の効いた建物から出ると、湿った風が頬を撫でた。一ヶ月程この湿度の高さにさらされ、ある程度慣れてきてはいたが思わず顔を顰めてしまう。
あともう少しでこの不快感ともおさらばだと自分に言い聞かせ、足早に駅へと向かう。
もう九時を回っているとはいえ、街灯や店から漏れ出る光が道を照らしているためそこまで暗さは感じなかった。それに加えかなり人気もあり、不審者を警戒する必要はあまりないようだ。
そもそもモンスターがでてくるわけでもな
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