ターン30 幻影の最終防衛ライン
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。実体のない企業の本社。そこに何があるのだろうか。それが罠である可能性と、何らかの情報が手に入る可能性。あるいは、その両方ということもありうる。
とはいえ、七曜の組織と今回の一件がどっぷり繋がっていることが分かっただけでも大収穫だ。襲撃犯が巴の息のかかった相手というのも、状況とあの男の言動、思考パターンから考えてほぼ間違いないだろう。
「ま、それ以上は行ってから考えるさ。ほらよ、一応アタシが出てってから使ってくれや」
格子越しにデュエルディスクを投げつけると、素早くそれをキャッチする七曜。背を向けて歩き出す糸巻に、ふと顔を上げて声を掛けた。
「ねえ、糸巻」
「あー?」
「私ね、ここでこのデュエルディスクの充電が切れてる、とか、そういうことしないあなたは割と好きよ」
「……らしくないな、悪いものでも食べたか?」
「茶化さないで。せいぜい気を付けなさいな、って話よ。それと私はほとぼりが冷めるまで身を隠すから、また何か聞き出そうなんて思っても無駄だからね」
自分でも、これは柄でもないと思ったのだろう。最後まで背を向けたままに放たれた別れの言葉に見えないことは承知で片手を上げ、それっきり出ていった。突如として拘置所の一室の壁が内側からの強い力によって粉砕され中にいた女が脱走したのは、それからたっぷり1時間後のことだった。
再び外に出た糸巻は、もう寄り道することもなく。無言のままに街を歩き、年季の入ったビルの前で足を止めた。この貸しビルの一室に実体なき企業、トリプルシェルの本拠地がある。
「……よし」
一切迷うことなく、そのまま中に入る。老朽化した狭いエレベーターを無視し、薄暗い蛍光灯が上から照らす階段を選ぶ。3階廊下の突き当り、会社名だけの書かれたシンプルな看板のかかった扉をものも言わずにこじ開ける。そこに鍵はかかっておらず、拍子抜けするほどにあっさりと開いた扉の奥には簡単に机と椅子が並べられ、それぞれパソコンとそれらしき書類の並んだいかにもなオフィスが広がっている。そして最奥の上役らしき席には、ただひとり座り込む男。
……知らない顔では、ない。その腕に装着されたデュエルディスクも、彼が元プロデュエリストであることを物語っていた。
「デュエルポリスか、巴か……お前の方が早かったか、糸巻」
「アンタがここの責任者か、本源氏?」
「ははは、責任者、か。そうだな、社長だ。部下はいないがな」
そう低い声で笑う男、本源氏轍。がっしりとした体格に頬にざっくりと走る古傷の痕も相まってまさに「その筋」の人間に見えるが、これでも現役時代はれっきとした堅気だった。皮肉にも、今の彼が手を染めたのはまさにその見た目通りの職なのだが。年は糸巻よりも10は上、その割に
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