ターン30 幻影の最終防衛ライン
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も評判だったのよ、デュエルモンスターズ産業のためなら割と財布の紐が緩いって。ここ数年あちこちの裏大会でスポンサーや建設予定地の提供をしてくれるから、表の世界でもあちこちから仕事を振ってあげてたの。だからここ数年で、あんな大企業になったのよ。特定の所属なんてことはないの。だから巴の側も、ビジネス相手ではあれど仲間意識なんてものはなかったんでしょうね」
にべもなく言い切り、口を挟む暇もなく話題が変わる。
「私たちが作ろうとしていた海上プラントは、建前では海底のレアメタル採掘が目的ってことにしておいたけど、実のところはプラントというよりファクトリーね。生産品目はただひとつ、例の新型『BV』よ」
「またそれか……もうお前らいい加減懲りてくれよな」
今度うんざりした声を上げたのは、糸巻の方だった。その表情は暗い。これまでにも散々煮え湯を飲まされてきた新型「BV」……これまで一点ものの試作品でしかなかったあれに工場ができるということは、ついにその量産のめどがついてしまったということだろう。
ところが糸巻の呻き声とは対照的に、七曜の態度は妙に静かだった。
「量産、というのは少し違うわね。巴がどうやってあんなものを作らせたのかはわからないけれど、あれはやっぱりオーパーツよ。私たちの時代にできていいようなものじゃない」
「ん、どういうことだ?」
「何かの鳥だか昆虫だかに、本来この体の構造からして飛べるはずがない種類がいる、って話、聞いたことはあるかしら?物理的にあり得ないのに、外を見れば確かに空を飛び回っている。一説によれば、自分が飛べると信じ切っているからなぜか飛べるんだなんて話もあるぐらい。それと同じことよ。ここだけの話あの新型はね、部品のひとつからネジの1本に至るまでをどうチェックしても、デュエルポリスの妨害電波をものともしないあのエネルギーがどこから出てくるかさっぱりわからないの」
「はあ?そんなもんのために、わざわざ工場ひとつ作ろうってのか?」
「完全コピーするだけなら、あれと同じものはできそうなのよ。もっともあの試作品、あの実物を見た私としてはいくらコピーしても同じ機能が再現できるとはちょっと思い難いわね。その場合でも、いざとなれば別のやりようはあるけれど」
「別のやりよう?」
「あら、この話はまた別料金よ?今はプラントとしての機能の話。それで話を戻すけれど、トリプルシェル本社にはもう行ってみたかしら?いくら実体のない企業でも体裁は必要だから、その辺の貸しビルをひと部屋借りてそれっぽく整えてるはずよ」
「ふむ……」
鉄格子によりかかったままの七曜の小さな背中を見つめ、今の言葉の裏を考える糸巻。別のやりよう、とやらも気にはなるが、もうこの件についてはさらに何かを提供しない限りこの女は絶対に口を割りはしないだろう
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