ターン30 幻影の最終防衛ライン
[4/17]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
聞かせてくれるってんなら、その話に夢中になったアタシはこいつをうっかりその中からでも手の届く場所に放置して、しかもそれを忘れたうえで帰っちまうかもなあ」
探るような視線が、糸巻の全身に絡みつく。このデュエルディスクを渡す、ということはつまり、『BV』を使用可能にするということに等しい。そして七曜のエースモンスター、黄金卿エルドリッチならばこの程度の牢はその両腕の怪力だけでいともたやすくひん曲げてしまえるだろう。
これは言外に「逃がしてやるから情報をよこせ」というグレーゾーン、どころかどこをどう見ても真っ黒でしかない司法取引の意思表示であり、その意図が理解できないほど七曜は愚かではない。たっぷり数秒間思案し、最終的に腹を決めたのかゆっくりとその口を開いた。
「……いいわ、わかったわよ。そもそもあなたが今ここに来たってことは、何かあのプラントに不測の事態があったのよね?」
「兜建設のおっさんが誰かに襲われた。書類も全部パーだとよ」
取引が成立したのであれば、もはや隠す理由はない。どうせ、外に出れば一面のニュースなのだ。デュエルモンスターズによって敗北したという点は情報統制によってどうにか漏洩を防いで単なる物盗りが偶然鉢合わせた社長に大怪我を負わせて逃げた、ということになってはいるが、裏のデュエル世界に精通した七曜のような人間が見ればすぐに嘘だとわかるだろう。
とはいえあまりといえばあまりの単刀直入さとその内容は、これまで内心を巧妙に隠し明らかにしてこなかった七曜の本心を引っ張り出すには十分なインパクトがあったようだ。目を丸くして大きく息を吐き、背を向けてずるずると鉄格子によりかかる。
「やってくれたわね……」
「心当たりが?」
「あるに決まってるでしょ。だから私、ああいう手荒な真似はやりたくなかったのよね。下手にちょっかいかけたら最後、絶対あの狐男ときたら、しつこくねちっこくやり返してくるに決まってるんだから」
「巴、か」
狐。元プロデュエリストの彼女たちにとって、そのワードが指す相手はたった1人しかいない。
「アイツ、アンタらに朝顔の奴がボコられたのはだいぶキレてたからな。抗争だっつってたぜ」
「だーから、あれは私の案じゃないのよ。あなたならわかるでしょうけど、組織って結構難しいのよ?アンタらなんて言い方はやめて、こっちにまで火の粉が飛んでくるわ」
そこまで言って、だいぶうんざりしたように首を振る。そんな理屈が通じる相手でないことは、彼女自身もよく分かっているのだろう。
「ん、でもおかしくないか?兜建設は、いつぞやの裏デュエルコロシアムには全面協力してた、いわば巴にとっちゃ仲間だろ?いくらアイツでも、そんなところを襲ったりするか?」
「そうじゃないわね。あそこは結構前から私たちの世界で
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ