ターン30 幻影の最終防衛ライン
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けでもない。
「どうだ、元気してるか?」
面会へのくだらない手続きは非常事態だの一言とデュエルポリスの証明書の合わせ技で半ば強引に突破し、七曜が収容されている部屋の前。知らない仲ではないゆえによく身に染みているが、この抜け目ない女の前で隙を見せるとどこまで譲歩を迫られるかはわかったものではない。密かに気合を入れ直し、何気なく遊びに来た風を装って鉄格子越しに声を掛ける。
「あら、珍しい顔ね」
壁に掛けられたカレンダーをぼんやりと眺めていたくすんだ茶髪の女が、振り返って気だるげに笑う。檻の中というシチュエーションも相まってどこか退廃的な空気すらも漂っている笑みだが、糸巻の目はさりげなく胡坐をかいたズボンの下に、今の今まで手にしていた針金らしき金属片を滑り込ませたのを見逃しはしなかった。
呆れ混じりにため息をつき、頭を掻いて煙草を取り出す。ライターに火をつけた段階で禁煙よ、とでも言いたげな視線を送ってきたが、火をつけたそれを口にするまで直接とがめることはしなかった。代わりに糸巻へと座ったまま向き直り、最初の煙を吐き出すのを見計らって興味深げに目を細める。
「それで、こんなところに一体何の用かしら?あいにく、お茶のひとつも出せないのだけど」
「それがだな……んー、駄目だ。やっぱアタシにゃ、遠回しな話は向いてない」
最初はこの軽口に軽口で返そうかという考えが糸巻の頭をよぎったが、すぐに面倒になって却下した。
「……さすがに、もうちょっとぐらい努力してみたら?まだ挨拶しかしてないじゃない」
「大きなお世話だっての。なあ七曜、お互いまどろっこしい能書きはなしだ。単刀直入に聞かせてもらう、トリプルシェル、とやらはアンタも一枚噛んでた案件なのか?」
「さて、ね。どうだったかしら?なにせここに来てから随分経つものだから、すっかり脳も老化しちゃったのよ。年って嫌ねえ」
前置きをすべて飛ばして件の会社名を直接叩きつけても、七曜の表情や態度には何の変化もない。しかしその気だるげな表情とは裏腹に鋭い眼光は、何か知りたければまず対価を支払いなさいな、と無言のままに促していた。
ここで厄介なのは、こちらがどんな対価を用意したとしても本当にまともな答えが返ってくるのかは不確定だという点である。何か知っているのか、あるいは本当に彼女と今回の事件は無関係なのか。その程度のことすらも、糸巻から先に何かを差し出さない限り知る術はない。予想していたとはいえ案の定な返答に苛立ち紛れに煙草をくゆらせて癇癪を抑え、ここに来る前あらかじめオフィスに寄って取ってきたあるものをカバンから取り出した。
「それ、私の!」
「ご明察、デュエルポリスで預かってたアンタのデュエルディスクだ。当然デッキもいじってないぜ?もしアンタが色々と
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