ターン30 幻影の最終防衛ライン
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ないと……」
「そこはまあ矛盾はないってわけか。だがな秘書さんよ、すこーし詰めが甘かったな。もしこいつが『BV』絡みの案件だった場合、それこそ海底に適当な金属のカードでも発動させればいくらでもデータは誤魔化せる。なにせいくらソナーで調べたところで、見つかるのは本物の金銀財宝なわけだからな。例えば……待てよ?」
そこまで言ったところで、不意に糸巻の動きが止まった。彼女の頭の中で、何気ない自分の言葉をきっかけにして急速に思考の点と点が繋がっていく。もはや周りからの奇異の視線どころか目の前の秘書すら目に入らず、力の抜けた手から滑り落ちたその体がずるずるとその場にへたり込んだ。ぶつぶつと呟きながら、漠然とした思考を言語化する作業に没頭する。
「黄金……黄金郷……呪われしエルドランド……」
「成金の女王」、七曜。思い浮かんだその顔は、忘れもしないつい先日のデュエリストフェスティバル。そもそもなぜ、あの女はここにいた?言うまでもない、爆破テロを引き起こし……そこで糸巻の脳裏に、鼓から聞いた話が蘇る。今回の爆破は、新型『BV』のデモンストレーションだと言ったらしい。
だが、そもそもだ。本当に狙いがそれだけならば、もっと大きなイベントなど世界中いくらでもある。全盛期の賑わいははるか昔、落ち目のイベントであるデュエリストフェスティバルを狙う理由がどこにある?
「アタシは無条件で、その部分に疑問を持たなかった。腐ってもデュエリスト、デュエルモンスターズのイベントを無意識に求めていたんだ、そう思ってた。だが」
もし、そうではないとしたら。この地を、家紋町の近辺を離れたくない何らかの理由が別にあったのだとすれば。例えばそう、エルドランドを一時的にでも海底に実体化させ、黄金やレアメタルの存在を確認させるような……。
「……おい。アタシは少し用ができた、悪いが後はうまいことやっといてくれ」
「ちょ、ちょっとぉ!?」
言うが早いが身を翻し、困惑混じりの抗議の声を背中で受け止めて外に出ていった。
15分後。糸巻が現れたのは家紋町の端、人もあまり寄り付かないような場所に位置する拘置所だった。
逮捕、起訴を受け刑が確定するまでの犯罪者が拘留されるこの施設、かつては全国にも限られた数しかなかったと聞く。それが爆発的に増えたのも、『BV』によって様変わりした世界の在り方のひとつだ。どれほど警備を重ねようが、人間では実体化したカードには勝てない。どれほど分厚い壁だろうと、城壁壊しの大槍を用いての正面突破からミスト・ボディを使っての壁抜けまで、突破方法はいくらでもある。施設そのものの数を増やすことで一か所辺りにぶち込む犯罪者の数そのものを減らし、脱獄リスクを薄める……その場しのぎにすぎない稚拙な方法だが、効果がないわ
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