ターン30 幻影の最終防衛ライン
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「というか、アタシはどうもよく分からないわけだが」
開いた金庫の前でパニックを起こす兜大山の秘書と、それをなだめようとする鑑識。さらにその背後で、ふっと糸巻が片手をあげた。
「はい?」
「書類が盗られたのはわかったし、確かにそりゃ問題だ。でもそれにしたって、まだ昨日の今日の話だろ?さっさと先方に連絡入れとけば、理由も理由だしそう大事にはならないと思うんだが?」
「いやあのそういう問題じゃないですよ、糸巻さん」
何言ってんだこの人は、これだから常識知らずのデュエルバカは……と言いたげな鑑識の視線を無視し、顔面蒼白でついにはその場にへたり込んでしまった秘書に詰め寄る糸巻。制止させる暇を与えずにその胸ぐらをつかんで捻り上げ、無理矢理立ち上がらせる。
「それに、な。確かにアタシにゃ門外漢な話だがな、それを差し引いてもどーもアンタのその慌てっぷりは気になるんだよ。一体その書類とやら、何が書いてあったんだ?」
「ちょ、ちょっと糸巻さん!一歩間違えれば脅迫ですよそれ!」
「ならアンタの方から上に報告しときな、始末書ならそのうち書いてやるさ。さあ秘書さんよ、アタシは今、気が短いんだ。さっさと答えた方が身のためだぜ」
至近距離から喧嘩腰に目を覗き込んでやると、これまで殴り合いなんてできません、虫を殺すのもかわいそうでとてもやれません、といった絵に描いたように善良な人生を送ってきたであろう秘書の目にはっきりと恐怖の色が浮かんだ。もう一押しか、と踏み、視線を逸らすことを一切許さず締めあげる手もそのままにまばたきひとつせずに目を合わせ続ける。
実際に数秒もしないうちに、震えながらのか細い声が聞こえてきた。
「……この案件は、どうもきな臭かったんです……トリプルシェル、なんてこれまで聞いたこともない、まるでこの海上プラントを作るためだけに設立されたような相手会社に、それに……」
「それに?」
「……その、相手からの強い要望で、具体的な建設位置は絶対に外部に漏らすな、と言い含められてまして、私ですらその場所は知らないんです。こ、この金庫に入っていた、社長が厳重に保管していた書類、そこにだけ目的の座標が……」
そして指し示されたのは、こじ開けられた元金庫。これだけ怯えていては、嘘をつこうなどとは考えもしないだろう。ゆっくりと腕の力を抜いていき、呼吸をしやすくしてやりながら考える。
「なるほどなあ。となると権利荒らしじゃなくて、建設予定地そのものが目的だったってことか?ちなみに秘書さんよ。その海上プラントってのは、そもそも何をするための施設なんだ?」
「か、海底にレアメタルを極めて高い純度で含まれた岩盤が見つかったので、それを発掘するためだと私は聞いています……念のためわが社でも裏は取りましたが、それについては間違い
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