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戦国異伝供書
第百話 両翼を奪いその十二

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「三人をそれぞれ助けられる」
「それだけの者を持っていますか」
「毛利両川を縁の下で支えるな」
「そうした働きが出来ますか」
「そうした者もいてじゃ」
 それでこそというのだ。
「家は成り立つのじゃ」
「だからですな」
「お主には三人を助ける立場でな」
「懸命にですな」
「働いてもらう」
「それでは」
「その様にな、そしてな」 
 元就はさらに話した。
「他の者達もじゃ」
「それぞれの秀でたもので」
「存分に働いてもらい」 
 そしてというのだ。
「家を支え盛り立ててもらう」
「そうしてこそですか」
「毛利家は成る、だが」
「その人材が少しでも多い」
「それに限る」
「そういうことですな」
「うむ、だから優れた者はな」
 それこそというのだ。
「どんどん用いたい」
「毛利家の為に」
「家中で優れた者はな、しかし織田殿の様には」
 やはり信長を意識して言うのだった。
「人は集められぬな」
「といいますと」
「織田殿は優れた者は身分にも出自にも構わずな」
 それこそ一切というのだ。
「用いられる、生まれた国もじゃ」
「尾張にですか」
「限らずな」
 そうしてというのだ。
「用いられる、武士でなくともな」
「用いられるのですか」
「草履取りが侍大将になることもじゃ」
「ありますか」
「何でも木下殿とかいうらしいのう」
 この者のことも話すのだった。
「百姓の倅がじゃ」
「草履取りからですか」
「その頭の回転のよさと働きぶりを見込まれてな」
「侍大将ですか」
「そうなったという」
「侍大将ともなると」
 それこそとだ、元清も驚いて述べた。
「そうそうです」
「なれるものではないな」
「百姓が」
「しかしそれがじゃ」
「出来るからですか」
「そうなった、他にも何でもない家の三男や四男が才覚を見込まれ」
 そしてというのだ。
「重く用いられる」
「まさに身分だの出自だのはですか」
「構わずな、甲賀の忍の出の者が家老にもなる」
「やはり才があるので」
「そうじゃ、織田家でも指折りの御仁になっているという」
「忍の者は用いても」
「才があろうとも家老にはじゃな」
 それはというのだ。
「何でも采配も政も出来るからな」
「そうしたと」
「そこまでの用い方をされることはな」
「父上も無理ですか」
「一体どうした御仁かな」
 信長、彼はというのだ。
「わしもわからぬまでじゃ」
「どうしてわからないのですか」
「見当がつかぬからじゃ」
「織田殿がですか」
「甲斐の武田殿や越後の上杉殿も相当というが」 
 この二人のことも話す。
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