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戦国異伝供書
第百話 両翼を奪いその十

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「確かにです」
「夫婦の絆が確かであるとな」
「それだけで違いますな」
「わしは義母上がおられてな」
 今も慕って大事にしている杉大方がというのだ、今はこの義母に水ではなく普通に茶を飲んでもらっている。
「奥がおってな」
「それで、ですな」
「こうして働けておる」
「政でも戦でも」
「奥に任せておけば問題ない」
 政や戦以外のことはというのだ。
「そうも思える位じゃ」
「だからですか」
「わしにしてもじゃ」
 まさにというのだ。
「これ以上有り難いことはない」
「だから我等もですな」
「しかとした奥を貰い大事にしてな」
 そしてというのだ。
「その絆を深めていくのじゃ」
「さすれば」
「そのことも言っておく」
 息子達にというのだ。
「しかと心得ておく様にな」
「わかり申した」
 三人の息子達は声を揃えて応えた、その後で。
 元就は三人の下にいる息子の一人で穗井田家に養子に入った元清を呼び彼に対しては穏やかな声でこう言った。
「そなたわかっていよう」
「はい、父上が何故それがしに言われるか」
「きついことをな、それはな」
「それがしが毛利家と吉川家、小早川家ではなく」
「穂井田家に入ってじゃ」
 そしてというのだ。
「もう一つの家の者となっているからな」
「だからですな」
「中々ややこしい位置におる」
 元清、彼はというのだ。
「だからな」
「父上はそれがしをあえてですな」
「人前では厳しいことを言ってな」
 そしてというのだ。
「下げておるのじゃ」
「左様でありますな」
「そしてじゃ」
「それがしのことをですか」
「守っておる」
 そうしているというのだ。
「お主は四番目としてじゃ」
「兄上達を支える」
「そうした者でじゃ」
 それだけにというのだ。
「縁の下、目立ってはな」
「なりませぬな」
「変に担ぐ者もおれば」 
 家中でというのだ。
「尼子家に狙われることもじゃ」
「あるので」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「お主はな」
「父上の誹りを受けよというのですな」
「甘んじてとは言わぬ、お主を守る為わしは敢えて言う」
 その誹りをというのだ。
「そのことよいな」
「はい、それがし父上のお心承知しているつもりです」
 これが元清の返事だった、何の淀みもないものだった。
「ですから」
「そう言うか、ならな」
「その様にして下さいませ」
「それではな、確かに毛利家は毛利の本家を吉川、小早川の両家が支えていくが」
「それだけではなく」
「お主達もな」
 元清達後の弟達もというのだ。
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