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曇天に哭く修羅
第四部
Bブロック 4
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


春斗の感覚が研ぎ澄まされ、異常な程の知覚能力を彼にもたらしていく。

そして目に映るものが透き通る。

透視と変わらぬ世界で見る向子の骨を、筋肉を、臓器をつぶさに観察し、それぞれの向きや収縮、血の流れすらも洞察。


「【夜天中月(ムーンレイズ)】」


鞘に納まっていた刃を抜刀。

横一文字の軌道を描く斬撃。


(速いね)


明らかに身体能力が上がった。

変わる前とは大違い。しかしまだだ。まだ向子にステータスで勝てないだろう。

彼女は今までと同じように黒い短鞭で春斗の斬撃を弾こうとしたが、不可怪なものを目の端に捉え、即座に己の身を退()いた。

向子は春斗の斬撃を睨む。目を凝らすとうっすら何かが見えてきた。幾つもの刃だ。まるで三日月のようなそれは、エネルギーで出来た不定形であり、常に長さや大きさが変化している。


(もしや気付かれたか……? 例え五感や黒鋼の【真眼】で有ろうとも知覚できないと御墨付きを頂いたものなのだが……。もしはっきりと認識できているのなら、やはり会長は普通でないということになるな)


春斗の考えた通り、向子は刀の斬撃そのものが帯びた三日月の斬撃を、普通に避けただけでは喰らってしまうだろう非常に厄介な当たり判定を持っているに違いないと判断した。


(魔晄防壁で受け切る自信が無い訳じゃないけどまあ躱しといた方が良いよね)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「夜天中月はこの程度ではない」


春斗は刀身を立てバットのようにスイング。当然のように三日月の刃が発生。通常の斬撃に数十の斬撃が重なって射程を広げる。

彼の前方から数メートルに渡って幾つもの斬痕が刻まれていくも、やはり向子は三日月が届く範囲外に逃れて回避。

彼女は攻撃した後の空白時間を狙って躊躇(ためら)うこと無く突っ込み短鞭を振りかざす。

水平に剣を振り抜いた春斗は僅かに動きが止まっており、勢い余ってしまったのか体が(ねじ)れ、背中まで向けていた。

彼の手中で刀が回り反転。


「シィィィィィィィ……」


刃が逆を向き、今振った方と反対に刀身が走り、体が捻れたことで溜め込まれた力も利用され、刀の推進力が増して加速。

やはり月のような斬撃も帯びた。

向子は突っ込む最中で咄嗟に跳ぶ。前転しながら逆立ちのような姿勢に。


音隼(おとはや)


背・手首・足首から魔晄(まこう)が噴出。

粒子で出来た金色の翼が構築され、向子を浮かし、宙に留め置かれる。

その姿を春斗の目が追った。


「アタシは黒鋼焔の友人だからね。彼女とは何度か戦ったし、黒鋼の【練氣術】を覚える機会も有
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