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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
ここからあたしは、始まる
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本の上にあるメモ用紙にはそう書かれている。
人間嫌いであるロボとは違うのか、彼はやたらと接してきた。
で、今読んでるのがそのへシアンからもらった本だ、

「はなとゆめ…ですか?」
「この本読んでるって紫式部には言わないでね。」

まぁ、平安時代に生きた女流作家の生い立ちを書いたものと言っておこう。
さらにそれだけではなく色々な人からもらうもののほとんどのジャンルが

「偉人の生い立ち、研究本、または資料なんですね。」
「まぁ元からそういうの好きだし。」

エッセイだったり生い立ちを綴ったものだったり、
謎に包まれた偉人をあれこれ推測するものといった具合だ、

「そこまでたくさん読んでると、小説家にでもなれそうですね、葵さん。」
「うん、まぁ…なろうとはしてた。」

小説家になる。
確かにそういう夢はあった。
昔から色んな本を読みふけり、小説家になろうと幼少時代から決意していたくらいだ。
おばあちゃんは応援してくれたけど、夢ばかり見ないで現実を見ろって両親に大反対されて諦めたんだっけ。

「なろうと…してた?」
「両親に反対されてやめた。きっと売れないぞーとか。現実は厳しいんだぞーとか。書いたことないくせに偉そうに言ってさ。」

パタンと、読みかけの本を閉じる。
香子と同じ時代を生きた女流作家の生き様を中断し、空を見上げる。

「ホント…クソみたいな両親だ…。」

あの時の光景を思い出す。
宗教家の幹部となった両親。
自分がサーヴァントを持っていると知るやいなや、鬼気迫る表情で怒鳴られたあの時、
あれは…親が子にする表情ではなかった。

「じゃあなっちゃえばいいじゃないですか、」
「え?」

思い出したくないことを思い出していたとき、近野さんがそう言った。

「なりたいんでしょ?小説家。さらに今だったら紫式部っていうプロ中のプロが味方になってくれる。クソみたいな両親は死んだも同然だし、1度やってみればいいじゃないですか。」
「え…えぇ?」

突拍子も無い言葉に、動揺を隠せない。
なる?今から?こんなにも急に?

「世界は崩壊してる。だったらやりたいことや好きなことの1つや2つ、人の目も気にせずやってみましょうよ。まぁ私はそうして先輩についてきたんですけど。」

そうだ。
世界はあの日壊れた。
法律も、社会も、今までの常識とルールも。
何もかも崩壊した。
逆に言えばそれは、常識にはとらわれなくなったということ、
さらに言えば縛るものなど何も無い、本当に自由の身になったということなんだ。

「やって…みようかな?」
「みようかなじゃないです。やるんです。」

肩をがしっと掴まれ、迫真めいた表情で近野さんは熱く語る。

「こ、こんちゃん?」

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