第六十四話 大森林の精霊
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ま、体液を吸うエント。余りの悪趣味に、ジャックは胸のむかつきを覚えた。
『ニンゲンが禁断の地に逃げ込んで以来、ニンゲンの味とは遠ざかっていて、皆も苦しい思いをしているだろう』
『コイシイ! コイシイ! ニンゲンノアジ!!』
エントの演説に獣達が応える。
『だが、古き友人『ウェンディゴ』が教えてくれた。我等が領土の外にニンゲンが大量に住み着いたそうだ』
『オオオォォォ!! ニンゲン! ニンゲン! ニンゲンノニク!!』
申し合わせた様に、獣や亜人から一斉に声が上がり、凄まじい大音声で空気が震えるほどだった。
獣達の目は爛々と光り、肉食獣のみならず草食獣すらも殺気だった目で『ニンゲンノニク!』と叫んでいた。
(……何だ?)
ジャックは戸惑いながらも、先日の原住民のリーダー、デガナヴィダの言葉を思い出した。
(ウェンディゴ? たしか……獣達を操る悪しき精霊が居ると言っていたが……そのウェンディゴがこの獣達を?)
だが、ジャックが答えを導く前に自体が動いた。
『我等が領土を出て、人間を狩りに行こう!』
『オオオオオ!!』
『往こう諸君! ニンゲンの血と肉で己が体毛を彩ろう!!』
『オオオオオォォォッ!!』
先程より更に大きい大音声が空に大地に湖に響き、湖の周りに集まっていた獣達が湖から離れ何処かに向かって歩き始めた。
(もしや……)
と、思ったジャックは、懐から革製の水筒を取り出し中身を開けた。
水筒から流れ落ちた水は、地面で弾ける前に、ピンポン球大のウォーター・ビットに変わった。魔力節約の為のマクシミリアンが考え付いた魔力節約法だ。
ウォーター・ビットは周辺の地図をジャックの手の甲に描く。
地図の内容から獣達の目的地が分かった。獣達はヌーベルトリステインの前線基地フォート・ノワールへとまっすぐ進んでいた。
「大至急、この情報を本部と各部隊に送れ……群れが動いた」
ジャックは周りに聞こえないように小さな声で命令すると ピンポン球大のウォーター・ビットは、ピクンと一瞬だけ震えた。どうやら情報を各部署に送っている様だった。
やがて、ジャックが潜んでいるバイソンの群れも動き出し、数万の獣の群れはまるで大河の流れの様だった。
湖の中央に聳え立っていたエントも、自分の根を多足生物の様に動かし、湖から出て獣の軍団の後に続いた。
ジャックは、ギリギリまで群れの中に潜み、獣達の情報を送り続ける事にした。
大地を埋め尽くす獣の群れとは別に、空には雷の色をした10メイルほどの怪鳥が一羽、エントの上空を旋回していた。
☆ ☆ ☆
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ