第89話『優菜の想い』
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のだ。
「それにしても、何で助かったんだろうな?」
「っ…!」
そんな大地の質問が聞こえて、晴登の肩がビクッと跳ねる。その疑問はもっともだ。だが、魔術を使ったなどと言えるはずもない。
「き、木がクッションになったのかな〜?」
「それよく聞くけど、ホントにありえるんだな」
晴登の苦し紛れの答えに、大地はふむふむと頷く。もしかして納得したのか? こんな適当な理由で。でも好都合だから、そういうことにしておこう。
「それでは、三浦君と戸部さんは医務室へ向かって下さい」
「「わかりました」」
話の辻褄を合わせるため、晴登たち2人は実際に医務室に行くことにする。捻挫はしていないが、着地の衝撃で擦りむいた所はあるから、それで誤魔化せるだろう。ひとまずこの問題は解決だ。
──だが晴登はこの時、もう一つの問題を完全に失念していたのだった。
*
医務室で軽く手当をした晴登と優菜は、旅館のロビーにいる大地たちの元へと戻ってきた。そろそろ夕食の時間ということで、昨日と同じ調理場へと一緒に向かうために待っていて貰ったのだ。ついでに言うと、スタンプラリーの顛末も聞きたかったりする。
山を登りながら、晴登は大地の話を聞いていた。
「優勝は頂上で会ったあのチームだ。スタンプを76個集めたらしい」
「頂上の3個のスタンプが無くても優勝したんだ…」
「そうそう。で、逆に俺たちは失格。まぁこれはしょうがないけどな」
申し訳ない気持ちはあるが、緊急事態だったから致し方なし。もしあの事故がなければ優勝を狙えたかもしれないが、過ぎたことを考えても後の祭りだ。
「でもって優勝賞品なんだが、これが何とも言えないやつでな・・・」
「な、何だ…?」
大地が苦笑いしながらもったいぶるので、晴登はドキドキしながら催促する。すると大地は徐に口を開いた。
「『今日の花火を特等席で見られる券』だと」
「それは確かに…微妙だな」
大地の言う通り、これは人を選ぶ賞品だ。花火を好きな人とかなら嬉しいだろうけど、あの男子たちが喜ぶかと言われると微妙なところである。
すると大地は何かを思いついたように、ポンと手を叩いて言った。
「そうだ、"花火の噂"とか信じてるやつにはオススメかもな。ムード的な」
「あ、なるほど・・・って、あぁ!」
「うおっ!? どうした晴登、いきなり頭抱えて!?」
ここに来て、ようやく重大なことを思い出した。皆と再会した喜びで完全に忘れてしまっていたのだ。花火というイベントがあることも、結月と約束を交わしていたことも。どうしよう、まだ告白するかどうかも決めてないのに。散々色んな人
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