第8章:拓かれる可能性
第257話「戦いを前に」
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だ。……今のお前は転生特典を奪われ、今は並の魔導師より少し強い程度でしかない。今までの経験からそれ以上の強さを発揮する事は出来るだろうが、神界での戦いにおいてはかなり厳しいぞ」
「……分かってる」
そう。今の神夜はかなり弱くなっている。
“意志”で先程の戦いは乗り越えたが、それでもギリギリだ。
意地で戦っていたにすぎないため、どうしても最終決戦にはついていけない。
「帝のように“可能性”を拓いたならともかく、このままではまずい。ソレラに特典を戻してもらう事も出来るが……」
「戻せるのか!?」
「授けた張本人だ。剥奪が出来るのなら、再度授ける事ぐらい可能だろう」
転生特典が戻ってくるかもしれないと、神夜は驚く。
しかし、優輝は“だが”と続ける。
「だからと言って、それで勝てるかはわからない」
「……なぜだ?」
「特典の力は、“可能性”を拓けない。ソレラの力を大きく超える事も出来ないし、飽くまで“特典”の枠に収まっているんだ。その力が借り物である限り、な」
「………」
神界で帝が見せた力も、飽くまでギルガメッシュとエミヤの力を際限なく使う事で出来ただけに過ぎない。
実際、二人に出来ない事まではその時は発揮出来ていなかった。
「借り物、か……」
「それで戦う事も止めはしない。どうあってもお前の選んだ選択だ。……お前が本当にしたい事のためにする最善手ならば、誰も止めはしないさ」
選択を委ねられ、神夜は一度自分の掌を見つめる。
今一度自身を振り返り、どうするべきか考えていた。
「話はそれだけだ。悪いな、時間を取らせて」
「いや……ありがとな」
「……礼なんていらないさ。元を辿れば、僕の責任でもあるからな」
“自分が原因だ”と優輝は言う。
かつての神夜なら、その事で優輝を責め立てただろう。
だが、今はその気にならなかった。
「(イリス……俺の性格を利用して、俺にあんな事をさせた元凶……)」
“その鬱憤をぶつけてやれ”と、帝に言われた。
“本当にしたい事ならば止めない”と、優輝に言われた。
自分に魅了なんて力を与えた元凶に仕返ししたいと、常々思っていた。
「ッ……!」
その想いは積もり、一つの“意志”となる。
元凶たるイリスに一発入れるため、何が何でもそこに辿り着くという“意志”に。
「……なんだ。これなら大丈夫だな」
その“可能性”の力を、部屋から立ち去った優輝も感じていた。
「“可能性”は満ちた。……こっちは、もう万端だぞ?」
戦いの前準備は終わった。
ここからが反撃だと、優輝は神界のどこかにいるであろうイリスに笑みを向けた。
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