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或る皇国将校の回想録
幕間 安東夫妻のほのぼの☆東洲再建記
第一章安東家中改革
安東家中大改革(上)
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耕せておりますか?
飯も食わせられず、田畑も整えられるのモノを誰が”殿”と認めています?
今必要なのは金子と領民を安心させる賃金です、金子があれば食糧が入ってくる、他に必要な物も何もかも多少の不自由はあれど店に並ぶ、それが大切な事です。
貴方達がそれをできず、我々に何も生みだせぬよう民草を抑えつけ我の我のと騒ぐなんて」
 瑠衣子が扇子で口元を隠しているが、その裏に浮かんでいるものは誰の目にも明らかであった。
「‥‥失礼する!」
 憤然と出てゆく武人でござい、と”だけ”背中に書いてある連中を見て瑠衣子は莫迦にしたような笑みを浮かべて見送った。 



皇紀五百四十五年 五月某日 東洲州都 東ノ府
”東洲公爵”安東家 公子 安東光貞

 銃を背負いで行進するのは二百余名ほどの兵達――ではない。そう、彼らは陸軍兵ではない。
 ”東洲復興総局特志保安隊ハ東洲復興業務ニ於イテ東洲ノ復興ニ際シ必要ナル公安維持ノ職務ヲ掌ル、州公営普請及ビ其他復興ニ際シ必要ナル政策実施ニ対スル犯罪並ビニ治安判事ノ認ムル事項ニツイテ捜査スル事ヲ得。
 特志保安官ハ東洲復興ニ際シ公安維持ノ職務ヲ掌ル州政庁ノ吏員ナリ、州政庁並ビニ鎮台ノ協議シ定ムル規定ニ从ヒ、復興総局事務総長之ヲ任ズ。”

  この条文を州諸令典に書き加えることで特志保安隊は生まれたのだ。瑠衣子の手腕は確かに辣腕であった。内務省の横車を受けず、家臣団の干渉を受けず復興事業の一環と押し通して安東家独自の治安機関として作り上げた。
 吏員は本家直属の兵下士官と関州の治安維持要員を引き抜いている。

「東洲州政庁復興総局特志保安隊の新設を記念しまして、東洲軍参謀長並びに州政副長官の安東光貞閣下よりお言葉を頂戴いたします」
東洲公である父は先の一件から完全に私――と瑠衣子に内治を任せ、皇都から動かない。 私は内地と東洲こまめに往復をしているが未だに父が何を考えているのかわからない。
「あー、諸君らはこの土地を襲った恐るべき災いからの復興に際し安全に全ての民草側が往来する為に志願をした。
我々はその志を実現する為に一丸となり――」
 苦手ではあるがやらねばならない 汗を拭きながら壇上から降りるときには疲れ切っていた。こうしたものも如才なくこなす保胤君は立派だな、と年下の公子への劣等感がうずく。

「ご立派でした若殿様」
 出迎えた瑠衣子は丁寧に汗を拭う。彼女は彼女で親愛をもって接している。叔父の安東吉光などは気質が逆であればなおよかったのだおるが、と肩をすくめていた。
 それはともかく瑠衣子を受け止め献策を実現させる為に押しが弱くとも尽力する誠実さは彼女にとっても得難いものであった。
「彼は?」「皇都から若殿様にお目通りを願っておりまして」
 末美が連れてきたのですが――と普段
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