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或る皇国将校の回想録
幕間 安東夫妻のほのぼの☆東洲再建記
第一章安東家中改革
安東家中大改革(上)
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について学んできましたので」
  婚姻ではなく領土の切り分けを相談する将家当主同士の会談かのような口調のまま彼女は続けた。
 眼鏡越しの眼が愉しそうに光った。計数に強いと聞いてはいたが好んで切り盛りしていた人間だな、と光貞は確信した。

「明貞公は東洲を手に入れたかったのではなく、重臣を黙らせるためにこのような愚行をしたのではありませんか?」

「直接的な御方だ」
 あまりに露骨な言い草に光貞はクスリと笑ってしまった。
 五将家は――否、諸将家の大半は皇家の血を引く陸兵総官を世襲していた耶麻城家の血を引くと主張しているが実際の出自はさまざまである。
 守原家は皇都の西につながる要衝を本貫とした正統な領主であり、宮城が実力を失ってからも時に利用しつつ支援を続けていた名門である。宮野木家は宮内の修繕を司った立場から御料山を領地として与えられたところから始まった宮廷文官の出身である。
 駒城は皇家に馬を献上する宮牧の長となった地域の実力者から身を建てた。西原は皇家によって西領を管理する府の高官(少なくともそう自称している)から西領の覇者となった。
 そして――我々の領地は不破国と虎州北部であり、代々皇家の為に東方を鎮守する武漢である。出自の点からは紛れもなく名門だ。
 支配する土地は豊かでその立地は莫大な富をもたらしたが――その豊かさに安東家は悩まされてきた。 皇都と龍州を結ぶ皇龍道と虎城からその大街道に流れる河川。そして港湾。
 そこには多種多様な利権があり、要所を抑えるいわゆる【知行持ち】の重臣団は極めて強い力を持っていた。それらの調停と均衡を保つ役目を担ったのが安東家である。

「【関所の関州】、ハッキリ申し上げますがその悪名は安東家の家風の象徴でしたから
 皇龍道の知行持ち重臣はあちらこちらに関所を建てて税を取り立てた。
特産品よりも流通による収益が齎される事が原因であったが――駒州の関所撤廃政策により関州の経済は皇都の経済発展から一時的に取り残される事となった。
「‥‥‥一つ違うよ。であったではない。【である】なんだ」

「ですが東洲へ移る際に関州の返上は――」
「執政府が三年間、結構な支援金を出すんだよ。それこそ関州の収益を上回る程のね」
 香気を楽しむ事もせず光貞は黒茶を飲み干した。
「――それほど羽振りよく振舞うくらい。執政府にとっては邪魔だったんだよ。【関所の関州】があそこの居座るのはね」
 叔父である安東吉光が引き出したのであれば素直に喜べるのであるが、官位を金で買った衆民が多数を占める天領経営の役所である改革派内務省が提案したのだ。
 五将家の干渉を嫌う皇都の資本家の走狗である内務省が金を差し出し本貫から追い出そうとするのは光貞にとっては愉快ではない。

 瑠衣子は当然だ、と露骨に態度に示
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