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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
☆そしてアタシは、あたしに戻る。
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「異常は見当たらない。いたって健康だ。」

あれから、
やはりどこかおかしいのではないかと思い町の唯一の医者であるアスクレピオスに診察をお願いした。
だが、おかしいところなど何一つないのだ。

「注射はしない?」
「しないに決まっているだろう。あれは病人にするものだ。」
「そっか。やった!」

診察から解放され、葵は傍にいる香子に飛び込むように抱きついた。

「ほら言ったでしょ?なんともないって!」
「…ですが、葵様は…。」
「あたしじゃなくて"アタシ"を見てよ。」

両手を顔に添えられ、ぐいと無理矢理目を合わせられる。
綺麗な青い瞳は今、血のように赤く染まっている。
ルビーのようにも思える深紅の瞳は、それもまたきれいに見えた。

「しかし二重人格か…興味深いな。」

アスクレピオスが意味深げに呟く。

「強いストレス、トラウマがトリガーとなって新たな人格を作り出す。心の防衛機能の一種らしいが何か心当たりはないのか?」
「心当たり…ですか?」

香子自身、彼女の昔話を聞かせてもらったことはあるがそれは中学高校の話だ。
それ以前の、ましてや幼少期の話は聞いていない。

「"そうなったキッカケ"がどこかにあるはずだ。」
「うん、あるよ。」

と、思いの外彼女は簡単に打ち明けた。

「アタシは今まで抑圧してきたモノの塊。源葵がこうしたいと思っていたIFの集合体。あっちが表ならアタシは裏。」
「その欲望とは…同性愛だけではないのですか?」

葵…もとい裏の葵は首を横に振る。

「違う。たったそれだけなら、アタシは産まれなかった。」
「だとしたら…!」
「知りたい?知りたいよね?アタシのこと。」

香子の背中に細い指が這う。
こそばゆさに声が漏れそうになるのをこらえていると、裏の葵は耳元で妖しく囁いた。

「えっちしようよ、香子。ヤらせてくれたら教えてあげる。」
「っ!?」

危険な予感がした。
だが、彼女のいう通りにしなければ自分のマスターの秘密は分からないだろう。

「分かりました。それではその…アスクレピオス様。」
「ああわかった。先輩には誤魔化して伝えておく。」

アスクレピオスに部屋を借りたいと伝える。
話は聞こえていたのだろうか事情を察したのだろうか、彼は呆れながらも承諾してくれた。

この診療所の近くには予備の部屋として"はなれの病室"がある。
幸い、そこには今誰もいないためそこを借りることにした。


?

「やったやった!アタシも香子とえっちができるんだぁ!」

はなれの病室。
窓からは夕日が差し込み、病室全体を橙色に染め上げていた。
その中で葵、もとい裏の葵はわくわくしており、ベッドに腰掛け楽しそうに足をぶらぶら
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