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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
☆そしてアタシは、あたしに戻る。
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「見てた…心の中からずっと…。」
「…。」
「笑いながら人殺して、挙げ句の果てには親にまで手をあげて…あたし…。」
「もう良いのです。あの葵様は…葵様ではないのですから。」
「…違うよ。」

葵は首を横に振る。
あれは、自分ではないという意見を否定する。

「あれは紛れもないあたしだ。あたしが今まで溜め込んできた…我慢してきたものの集合体なんだ。」
「…。」

紫式部はなにも言わない。
ただマスターの話を聞くことに専念することにした。

「子供の頃…厳しくしつけられててさ。」
「はい、」
「あれはダメこれはダメ、女の子らしくしなさいとか大人しくしてなさいとか、とにかく子供らしいことは出来なかったんだよね。」
「それが…まさか」
「うん。あっちのあたしが子供らしい原因だと思う。それと…」

子供らしくすることを我慢され、それがずっと心の中で溜まっていた。
しかしそれだけじゃない。
裏の彼女を、形作るものは

「昔、人を殴って…半殺しにしたことがある。」
「え…?」

あまり語りたくなかったのだろうか。
昔の話をしているときもその事は全く触れず、紫式部自身も今この瞬間知ったのだから。

「高校の時さ、しつこくナンパされてる友達を守ろうとしてそいつを殴った。騎士だヒーローだってもてはやされてさ、最初はあたしもなんか嬉しかった。」
「人を守るためなら仕方ありません。ですがそれが裏の葵様とどういった関係が…。」
「うん、そう思うでしょ?でも気付いたんだ。」

自らの手のひらを上にかざす。
過去に人を殴った手…そして、ついさっき人を殺したその手を。

「もてはやされんのが嬉しいんじゃない。あたしは人を痛め付けるのが嬉しいんだって。」
「…。」
「良からぬ輩から女の子を守る。そんな大義名分のもと暴力を振るえる。けどこれは間違ってるとは思ったし異常だと思ったよ。だからあたしは」
「…心の内側に…しまいこんだ。」

紫式部の出した答えに葵は何も言わず、頷いた。

「子供らしさ、嗜虐性、同性愛…そういった複数の抑圧されたものが合わさり、あの葵様が生まれたと。」
「そう…だと思う。」

それしか心当たりはないが、確かなものと言うには確証がなかった。

「どう?マスターがこんな最低で、失望した?」
「…。」

本当に、本当にすべてが明らかとなったマスターの秘密。
だけど、
そんな生半可な、たかがそれだけのことで嫌いになる理由など、紫式部にはなかった。

「いえ、全く。 」
「あ、あのさ…お世辞とかはいいんだよ?そこは正直に言ってくれた方があたしも助かるし…」
「これでも…分かってはくれませんか?」

と、葵の眼前に表示される文字列。
これは泰山解説祭のものだ。
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