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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
☆そしてアタシは、あたしに戻る。
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させていた。
「…。」
紫式部は何も言わず、部屋の鍵をかける。
裏の葵とは対照的に、その表情は真面目で冷たいものだった。
「ねぇねぇ!香子ってマゾなんでしょ?」
「…。」
「あたしとヤってる時、いつも気持ち良さそうにいじめられてたもんね!」
「…。」
「アタシもいじめたいんだ!ねぇ!何からがいい?」
「…。」
「…香子?」
さっきから何も返事をしない彼女を見て、裏の葵は不審に思う。
ベッドから立ち上がり、彼女に近付いて様子を伺おうとすると
「詰めが…甘いです。」
「え?」
トン、と彼女の細くて長い人差し指が裏の葵の額に触れる。
するとどうだろうか
「あれ…なに…これ…?」
「葵様なら、何かしないようもうこの時点で縛っていましたよ。」
膝をつき、力が入らない裏の葵に詰めの甘さを指摘する。
「なんで…なんで…?」
「あなたの誕生の秘密は葵様自身から聞くことにします。危険な存在であるあなたには…少々眠ってもらおうかと。」
「うそ…やだ!折角出られたのに!!」
必死に叫ぶ裏の葵。
だが、紫式部のかけたまじないは力ずくでは解けない。
「やだ…やだ!また暗くてせまいところで一人ぼっちだ!!見ることしかできない!アタシだって香子と仲良くなりたい!!もっと暴れたい!!」
「…。」
涙を流しながらそう抗議する裏の葵。
子供らしさも相まって多少良心が痛むが、彼女は危険な存在。
このまま放っておけば、自分のマスターが元に戻れなくなるのではと心配になった。
さらにこの裏の葵、
「もっともっと殺すんだ!邪魔なやつもムカつくやつも全部!香子があいつ殺したいって言えば、アタシ喜んで殺すよ?」
暴力に飢えている。
それだけで充分危険なので、紫式部は今の彼女に封印系統のまじないを施した。
力は抜け、次第に意識は薄くなり、主人格は本来の葵へと戻るだろう。
「やだよぉ…ねぇおねがい…アタシまだ…まだやりたいことたくさん…あるの…に」
最後にそう言い残し、裏の葵は糸の切れた人形のように倒れこんだ。
「…。」
床に倒れて頭を打たないよう支え、意識を失った彼女の顔を見る。
「裏の…葵様。」
子供のように純粋でありながら、とてつもない危険性を持った人格。
あのとき、血塗れで建物から出てきたのを覚えている。
おそらく裏の葵は、中で何人か殺しているんだろう。
きっと、子供が虫を殺して遊ぶかのように。
無邪気さと残酷さが同居した、子供特有のものだろう。
「ん…。」
しばらく見つめていると、葵が意識を取り戻した。
「おはようございます、葵様。」
「うん…おはよう…。」
彼女の顔はあまりいい表情ではなかった。
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