暁 〜小説投稿サイト〜
非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第88話『雨宿り』
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話

「ごめんなさい、私のせいで…」

「あ、いや、責めてる訳じゃないんだ! スタンプラリーなんかより、戸部さんの無事の方が大事だよ」

「…ありがとうございます」


残念だけど、背に腹は代えられないというもの。スタンプラリーの賞品とか気になるけど、今回は諦めるしかない。


「あの…1つお願いしてもいいですか?」

「何?」

「その…晴登君って呼んでもいいですか?」

「え!? い、いいけど…」


優菜はもじもじとしながら、それでいてハッキリと言った。いきなりの提案に、晴登は驚きながらも承諾する。にしても、どうしてこのタイミングに…?


「もっと、晴登君と仲良くなりたいんです」

「そ、そっか。うん、俺も戸部さんと仲良くしていきたいかな──」

「優菜」

「え?」

「私は晴登君って呼びますから、晴登君も私のことを優菜って呼んでください」

「えぇ!?」


何てことだ。確かに仲良くなるに当たって名前呼びは効果的と言うが、相手が女子なら男子にとってそのハードルは高い。莉奈や結月は自然とそうなっていたが、こうして改まって言い直すのは照れくさいというもの。加えて晴登のことを名前で呼んでくれる人はあまりいないから、呼ばれるのも余計にくすぐったく感じてしまう。


「えっと…優菜、さん…」

「ちゃん付けの方が仲良さそうじゃないですか?」

「えぇ!? じゃあ…優菜、ちゃん…」

「はい、ありがとうございます、晴登君」


恥ずかしい。今絶対耳まで赤くなってる。女子をちゃん付けで、しかも名前で呼ぶなんて何年ぶりだろう。昔はコミュ障で、女子と話すことすらロクにしてなかった訳だし、余計に緊張してしまう。


「そういえば、身体の調子はどうですか?」

「そ、そうだね。かなり回復してきたかな」


唐突な話題変換に戸惑いつつも、晴登はもう身体を起こせることに気づいた。まだ倦怠感は残っているが、歩くこともできそうだ。


「ではそろそろ移動しましょうか。雨も止んできたようですし」

「ここで待ってたら助けが来ないかな?」

「恐らく皆が救助を呼んでくれているとは思いますが、辺りは森ですし、開けた場所に出た方が見つけて貰いやすいかもしれません」

「なるほど」


優菜の意見に納得し、晴登はタオルを彼女に返して立ち上がる。崖の上から見た感じ、ここら一帯は森林だったはずだが、それでも行くしかない。


「準備はいい? 戸部さ・・・」

「……」

「優菜、ちゃん…」

「はい、大丈夫です」


…何だろう、凄くやりにくい。

戸惑う晴登とは対照的に、優菜は満足そうに微笑んだ。


[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ