第88話『雨宿り』
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だ。魔術部以外は知らないはずなのに。
「彼女、三浦君と一緒に魔術部に所属していると聞きました。でもいくら三浦君に懐いているとはいえ、あの部活に簡単に勧誘するとは思えないんです。何か、事情があるんじゃないんですか?」
「……っ」
鋭い。まさかそこに目をつけるなんて。
優菜には以前、魔術のことを話したと終夜から聞いた。だからこそ彼女は、もし結月が本当にホームステイしているだけの外国人だとすれば、晴登がわざわざ結月に謎だらけの魔術部のことを伝えるとは思えなかったのだろう。
「大丈夫です。言いふらしたりしませんよ」
「もう見抜かれてるってことね…。わかった、戸部さんには話すよ。実は──」
乗りかかった船だ。彼女には知る権利がある。晴登は結月と出会った経緯を一から話すことにした。
異世界に行って、氷の魔法を操る彼女に出会ったこと。そこで危険な目にあったこと。誤って彼女を現実世界に連れて来てしまったこと。念のため鬼関係のことは伏せたが、それ以外のことはありのままに伝えた。
「そんなことがあったんですね…」
「話しといて何だけど、信じてくれるの?」
「にわかに信じ難い不思議な話ですけど、でもそんな私の知らない世界があるってことは、既にこの目で見ていますから。それに、三浦君が嘘をつく理由もありません」
「そりゃそうだ」
晴登は軽く笑みを零した。何だか、肩の荷が降りた気がする。
どんなに小さなことでも、人に話せない隠し事は持っているだけで息苦しさを生むものだ。だからこんな風に魔術のことを皆に話して、そして信じて貰えたら、もっと気を張らずに生活できるようになるんだろうか。
「なら、私の方が先だったのに…」
「え、何?」
「いえ、何でもありません。話してくれてありがとうございました。ずっと気になっていたので」
「あ、うん。どういたしまして」
優菜が何かを呟いた気がしたが、声が小さくてよく聞こえなかった。何と言ったのだろう。…考えても無駄か。
それよりも、そろそろここからどうやって帰るかを考えたい。話して時間を潰すのもいいが、帰る手段が無いままなのはマズい。今どこにいるのかわからないのだから、当然帰り道もわからない。そもそも、スタンプラリーの範囲に入ってるかも疑わしい。せめて落ちてきた場所がわかればいいのだが、地図なんてものは持ち合わせておらず、持っているのは雨でずぶ濡れになったスタンプラリーの用紙・・・
「あ、濡れてる!? どうしよう戸部さんこれ?!」
「そこまで濡れてしまってはどうしようもできませんね…。スタンプラリーは諦めるしかないようです」
「そっか…。確かに、崖から落ちてる時点で続行なんてできないしね…」
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