第88話『雨宿り』
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「えっと、何でこうなったんだっけ…?」
「覚えてないんですか? また、私が助けられたんですよ」
「あっ…!」
優菜の言葉を聞いて、晴登はようやく先程の顛末を思い出す。
確かスタンプラリーの途中で大雨が降って、崖から足を踏み外した優菜を助けようと一緒に落ち、そして地面に当たる寸前で何とか風で落下の軌道を横にずらして、転がるように着地したのだった。その後のことはよく覚えていないのだが、恐らく魔力切れで気絶したのだろう。それで先に目覚めた優菜が洞窟を探し、晴登を運び込んだ、といったところか。
「最後だせぇな俺…」
「そんなことありませんよ! 三浦君がいなかったら、そもそも私は助かってなかったでしょうし…。以前熊に襲われた時もですけど、やっぱり三浦君は私の命の恩人ですよ」
「そ、そんなこと…」
ない、とまでは言い切れない。だって実際助けたのだから。でも、面と向かって命の恩人呼ばわりされるのは、かなり恥ずかしい。まして相手が学年屈指の美少女ともなれば、なおさら意識してしまう。というか、雨に濡れたせいで服とか直視できない状況なんだが…。
「…どうしたんですか? 顔が赤いですけど…」
「い、いや何でもないよ! 雨に濡れたし、熱でもあるのかな〜なんて!」
「それなら大変です! おでこ失礼しますね」
「あっ…」
優菜の柔らかい手が晴登のおでこに当てられる。雨で冷えたとはいえ、結月と比べるとやはり温かい。なんだか新鮮な気持ちだ。
「確かに、少し熱いような気も・・・」
「たぶん休めば良くなるよ! 心配かけてごめんね!」
「いえ、ゆっくり休んで下さいね」
そこで会話は一旦途切れる。優菜は晴登の体調に配慮しているのだろうが、ごめんなさい仮病なんです。だからすごく気まずい。
「皆も心配してるよね…」
「そうですね…。あの高さから落ちて生きてるなんて、正直今でも信じられません。早く戻って、安心させないとですね」
「ごめん、俺がこんな状態なばっかりに…」
「いえいえ! 三浦君が元気になってから動きましょう」
何とか会話を続けようと晴登は話題を振るも、これはさすがに雑だった。優菜に気を遣わせてどうする。もっと別の話題をだな・・・
「あの…1つ訊いてもいいですか?」
「うん? いいけど…」
そう考えていた時、優菜の方から声をかけてくる。訊きたいことか…何だろう。
「結月ちゃんとは、本当はどこで出会ったのですか? ホームステイって話は嘘ですよね?」
「え!? な、何を言ってるのかな…?」
あまりに脈絡のない質問だが、晴登は困惑するより先に狼狽える。なぜそのことを知っているの
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