第6部 贖罪の炎宝石
第6章 出撃
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その感覚…に近いものをウルキオラは経験したことがある。
ウェールズが死んだとき、失ったときに感じたあの感覚だ。
それが正解かはわからないが、友人の一端をつかんだような気がした。
「なるほど、失いたくない存在か」
「すまないね、うまく説明できなくて。少しは理解してもらえたかな?」
コルベールは鼻息を漏らし、少し安堵した表情を見せた。
「失いたくない存在が友人であるならば、コルベール、確かにお前は俺にとって友人なのかもしれんな」
「ウルキオラくん……ありがとう」
コルベールは、驚いたように目を見開くと、それをかみしめるようにして礼を言った。
「なぜ礼を言う?」
「あ、ああ!すまん!」と眼鏡をかけなおした。。
「別にいいが…」
コルベールは真顔になった。
「なあ、ウルキオラくん……、実は、その……」
「なんだ?」
その瞬間、ルイズが姿を見せた。
「遅い」と、ウルキオラがつぶやく。
「仕方ないじゃない。女の子は準備がいろいろあるのよ!」
「戦争へ赴くんだぞ?女の準備など必要はない」
ルイズはつんっと顔をそらすとウルキオラを無視して翼によじ登り、コックピットに入り込んだ。
そんなルイズを横目に、ウルキオラはコルベールに視線を移す。
「さっき、何を言いかけていた?」
「い、いや、何でもない、うん」
「そうか、ならいい」
ウルキオラはゼロ戦に乗り込んだ。
エンジンを始動させ、飛翔の準備を進める。
うねりを上げるエンジンの音の中、コルベールは叫んだ。
「ウルキオラ くん!ミス・ヴァリエール!」
ウルキオラは視線だけをコルベールに向けた。
「死ぬなよ!死ぬな!みっともなくたっていい。卑怯者と呼ばれてもかまわない!ただ死ぬな!絶対に死ぬなよ!絶対かえって来いよ!」
コルベールの言葉に、ウルキオラはふっと微笑した。
そうして、片手をあげ、コルベールの言葉に反応を示した。
スロットルを開く。
ゼロ戦が滑走をはじめ、ぶわっと浮き上がり、ぐんぐん上昇していった。
徐々に小さくなり、空の向こうへと消えていく。
ゼロ戦が空の向こうに消えて見えなくなっても、コルベールはじっと、見送り続けた。
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