第6部 贖罪の炎宝石
第6章 出撃
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しめるように公爵の言葉を耳にしている。
「だが、戦争というものはどれだけ強くとも、予期せぬことで危機に立たされることがある。そして、彼が、ウルキオラがいくら強いといっても、それよりも強いものが存在しないとも限らない」
「そ、それは…」
ルイズは一瞬反論しようとした。
ウルキオラより強いものなどいるはずもない。
そう信じたかった。
しかし、なんの確証もない、いわば自らの希望的観測を口にするわけにはいかなかった。
何より、ウルキオラ自身が、自分より強いものがいるということを話していたのをルイズは知っていたのだ。
「天狗にならず、常に冷静に物事をとらえるのだ。決して死んではならんぞ!」
公爵の語り出しとは打って変わったような大きな威厳のある声に、ルイズは驚き目を見開いた。
だが、そこに公爵の、父の愛情を感じ取ったルイズはピシッと背筋を伸ばした。
「わかりましたわ。父さま」
カリーヌもまた、いつもとは違う、優しい表情でルイズに語りかけた。
「気を付けていくのですよ。ルイズ」
ルイズはそのことが、心の底から嬉しかった。
幼少期から、両親に事あるごとに苦言を呈されてきたルイズは、ずっと認めてもらいたいと努力を重ねてきた。
それが実るまでには、いや実際のところはまだ実っているわけではないが、長い時間を要したのだ。
たとえ、そのほとんどがウルキオラの手によるものだったとしても、ルイズにとってはうれしかったのだ。
「ヴァリエール家の名に恥じぬよう、全力で戦ってまいります」
そういって、一度ペコっと頭を下げると、車のへと足を運んだ。
そんなルイズをみて、シエスタも慌てたように一礼して、車の中へと入っていった。
『ドルルゥゥンッ!』
車のエンジンが呻くように鳴り響く。
一体何時ぶりであろうか。
長い間、倉庫の中で眠っていた車が、陽光煌めく草原へとタイヤを進める。
そんな車が視界から消えるまで、ヴァリエール一家はじっと見守り、見送った。
「感動的なものだ」
公爵が放った言葉を、3人は黙って聞いていた。
「儂が生まれ、物心がついた時からあったあの『鉄の馬』が、ただのガラクタだと思ったあれが、まさか本当に馬のように走る日が来るとは」
「ええ、まったくですわ」
カリーヌもまた、黄昏るように車が走っているであろう彼方を見つめながら言った。
「私もぜひ、乗ってみたかったですわ」
カトレアが屈託のない笑顔を浮かべる。
「あんな得体のしれないもの、御免被るわ」
エレオノールは嫌見たらしく、だが、どこか寂し気な表情で口を開いた。
「そうか?…わしは乗ってみたいものだな」
公爵の、どこか
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