第百六十六話 全て整いその八
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「そして側室に口添えさせる」
「こっちに降る様にな」
「そうしたこともしていく」
「策としてやな」
「そこは側室でも誰でもいい」
「正室さんでもやな」
「寵愛している小姓でも娘でもな」
その相手はというのだ。
「何でもこちらに取り込めばな」
「ええな」
「その側室に贈りものをするなりしてな」
「中国でそうした話がありましたね」
紅葉が言ってきた。
「それは」
「そうだったな」
「史記でしたね」
司馬遷が書き残した書だ、中国の歴史漢の武帝までを書いた紀伝体の書であり中国の歴史書の実質的なはじまりとさえ言われている。
「史記の戦国時代の話で」
「王の側室に貂の毛皮を贈ってな」
「協力を得ましたね」
「そうしたこともだ」
「時としては必要ですね」
「その逸話に出た貂の毛皮は高価だ」
それだけに価値があったのだ。
「西の浮島でもな」
「それだけでかなりの財産ですね」
「この浮島ではない」
「そうしたものですね」
「だが戦をするよりもだ」
「貂の毛皮は安くつきますね」
「何なら西の浮島から取り寄せて」
空船での貿易でというのだ。
「そしてだ」
「それを贈り」
「大名に口添えをしてもらった降らせた方がな」
「いいですね」
「戦よりも銭はかからず」
そしてというのだ。
「結果として動かす人もな」
「少ないですね」
「そして血も流れない」
「そのことが最も大きいですね」
「だからだ」
それ故にというのだ。
「調べられたことを読みな」
「頭に入れて」
「策も使う、そしてな」
「貂の毛皮の様なものもですね」
「手に入れてな」
そうしてというのだ。
「使っていく」
「そうされますね」
「そして東海と甲信を手に入れて」
その次にというのだ。
「北陸もだ」
「そうされますね」
「その様にしていく」
「では今より」
「出陣だ」
こう言ってだった、遂に。
英雄は仲間達と共に出陣し大坂城を発つことにした、その夜に御所においてお静に対して強い声で告げた。
「出陣する」
「左様ですか」
「その間留守を頼む」
「わかりました」
「そして今宵はだ」
お静をじっと見て言った。
「わかるな」
「それでは」
「楽しませてもらう、そしてだ」
「帰られるとですね」
「その時もだ」
「お待ちしています」
「ただ、わかっていると思うが」
英雄は正室に冷静な顔で話した。
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