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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
第二百八十一話 三人になってその二

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「碌に食べものもなくて」
「お肉もお酒も」
「もう生きるのに必死でね」
 当時百万もの餓死者が出るのではと言われていたらしい、太宰の小説だと美男子と煙草という作品で痩せた子供達が出ている。その煙草を吸う美男子達のことだ。
「それでね」
「パーティーにしてもよね」
「出来るものじゃなくて」
 それでだ。
「お酒はあっても」
「それでもなのね」
「これが凄くてね」
 僕はカレーの食券を買いながら詩織さんに話した、詩織さんもそうしている。
「もうね」
「あれ?カストリっていう」
「そう、メチレンとか入った」
 工業用アルコールがだ。
「そうしたお酒でね」
「飲んだら大変だったのよね」
「死んだ人も多かったよ」
「その話私も聞いたわ」
「三合飲んで死ぬってね」
「そう言われてたのよね」
「お酒はそんなのでね」
 もう飲むのも命懸けだった時代だったのだ。
「ツリーなんてね」
「何処にもない時代ね」
「そんな時代のメリークリスマスだったから」
 それでだ。
「もう言葉で言って」
「それで終わりだったのね」
「その頃はね」
「そんなクリスマスだったのね」
「戦争前から知っている人はいたと思うよ」
 西洋の文化が入って来るその中でだ。
「そうだったと思うよ、けれどね」
「一般には普及していなかったのね」
「その頃普及しだした頃だよ」
 そうだったと思う。
「本当にね」
「そうだったのね」
「それでカレーも」
 僕はこれから食べるそれの話もした。
「凄いカレーがあったんだよ」
「ああ、残飯が具の」
「進駐軍のね、けれどそれはまだましで」
「そうなの」
「もうとんてもなく大きなスプーン出して」
 これは織田作之助の世相という作品にある、夫婦善哉と同じくカレーが出て来る作品であるのが面白いと思う。
「その下にご飯を少し置くんだ」
「ご飯は少しなの」
「それでスプーンの上にルーをかけるんだ」
 そのカレールーをだ。
「そうしたカレーもあったみたいだよ」
「出来るだけご飯を少なくするのね」
「その頃は残飯を使ったカレーとかシチューがあって」
 そしてだ。
「すいとんの時代でね」
「そうしたカレーもあったのね」
「戦争が終わって何もない時代でね」
 そういえば終戦記念日を何故敗戦としない日本はだから駄目だと幼稚だと落合信彦が言っていた。とにかく日本の悪口を言う人だけれどその根拠は常にアメリカだ。そんなに日本が嫌いでアメリカが好きで何故日本にいて日本で本を出版しているのだろう。
「それでなんだ」
「カレーもそんなのだったの」
「夫婦善哉のカレーはね」 
 とてもだ。
「なかったよ」
「そうだったのね」
「とてもね」
「それはね」
 本当にだ。
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