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戦国異伝供書
第九十九話 厳島の合戦その五

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 弟達と共に船に乗った、勿論そこには元就も毛利家の諸将もいてだった。そうして全軍で厳島に向かった。
 途中で隆景は父の言う通りに村上水軍と共に大江浦に向かった、元就は隆元そして元春と共にまずは鼓ヶ浦に向かった。
 そして鼓ヶ浦に上がるとだった。
 元就は船を全て帰らせた、これには誰もが驚いた。
「殿、これは」
「どういうことですか」
「一体」
「舟を帰らせるとは」
「灯りを点けずここまで来ましたが」
「皆生きたいな」
 元就は彼等に落ち着いた声で答えた。
「そうしたいな」
「はい、それは」
「戦ですが」
「それでもです」
「出来れば」
「それは誰もが思うことじゃ」
 まさにと言うのだった、元就も。
「それはな、しかしな」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「殿、何か」
「これは背水の陣じゃ」
 元就は強い声で述べた。
「まさにな」
「では」
 志道がその言葉を聞いて言った。
「項王や韓信将軍の様に」
「うむ、後ろに川がある様にな」
「我等は今は退路がない」
「だからじゃ、生きたいならな」 
 それならばというのだ。
「我等はな」
「戦って勝つしかないですな」
「敵を倒してな」
「だからですな」
「そうじゃ、ではよいな」
「これよりですな」
「皆死ぬ気で戦うのじゃ、無論わしもじゃ」
 元就自身もというのだ、刀を抜いて言った。
「その様にする」
「殿もですな」
「これより宮尾城を攻めておる敵の後ろに向かい」
 そしてというのだ。
「そのうえでじゃ」
「夜襲を仕掛けますな」
「一斉に鬨の声と法螺貝を鳴らしてな」
 そうしてというのだ。
「攻めるぞ」
「わかり申した」
 志道が一同を代表して応えた、そしてだった。
 元就は隆元と元春にもそれぞれ命を出して動かした、そのうえで。
 宮尾城を囲んでいる陶家の軍勢に夜の闇に紛れて迫った、既に領地となっている厳島の地の利は毛利家にあった。それでだった。
 音もなく迫りそしてだった。
 陶家の真後ろにつくと元就は全ての将兵達に命じた。
「ではじゃ」
「これよりですな」
「声をあげ」
「法螺貝を鳴らし」
「そうしてですな」
「一気に攻めよ、緑の具足や陣笠、旗でない兵達はじゃ」 
 緑、毛利家の色のものを着けていないならというのだ。
「目に入り次第斬りそして突くのじゃ」
「そうしてですな」
「片っ端から倒していく」
「そうしていきますな」
「そうせよ」
 まさにというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「その様にしていきましょう」 
 兵達も頷いた、そしてだった。
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