第87話『高難易度』
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まってるぞ。優勝も夢じゃないな」
「そ、そうなの?」
他のチームの状況を初めて聞いて、ようやく晴登の中に焦りが生まれる。ペースとしては悪くないと思っていたが、やはり上には上がいるということか。
「つっても、このチームは男子ばっかだからな。お前のチームみたいに女子がいないから──」
そこまで言いかけて、男子はそれ以上の言葉を紡ぐのを止める。そして何かをじっと見つめたまま動かない。
「どうしたの…?」
「何で三浦が戸部さんと組んでるんだ…?」
「あっ」
忘れていた。そういえば彼こそが優菜と組みたがっていたのだった。どうしたものか、やはり謝るべきだろうか。
「いや、これには訳が・・・」
「皆まで言うな。最初から可能性は無いようなもんだったのさ…」
力なく答える彼に、晴登はそれ以上何も言えなかった。
すると彼はそのまま、元来た道を引き返していく。
「お、おい待てよ」
同じチームの男子が彼を追いかけ、そして彼らは頂上からいなくなった。
やっぱり、悪いことしちゃったかな。後で謝っておこう。
「何だったんだ、アイツら?」
「気にしなくていいんじゃないか? それより、あそこにスタンプがあるぞ。それも3つも」
「あの人たち、押さずに帰っちゃったけどいいのかな…」
大地の疑問に伸太郎が適当に返し、狐太郎は心配そうに呟く。確かに、これを放置して帰るのはもったいない。
とはいえ、晴登たちまで見逃す訳にはいかないので、彼らには申し訳ないが頂戴するとしよう。
「31、32、33の3つか。いくら頂上とはいえ、結構なボーナスだな」
「苦労した甲斐があったじゃん。ラッキーラッキー」
大地と莉奈の言う通り、これは予想外の収穫だ。もしかしたら、他にもこんなボーナスがあるかもしれない。まだ諦めるには早そうだ。
「この調子で行こう! 次はあの道だ!」
テンションが上がった晴登は、勢いで道を選ぶ。今ならたくさん見つけられる気がするぞ…!
「…? この匂いって…?」
「どうしたの、結月?」
晴登が意気込む背後で、結月がボソッと呟く。その様子が気になり、晴登は問うた。
「今、雨の匂いがしたような…」
「こんなに晴れてるのに? 気のせいじゃない?」
「それならいいけど…」
彼女は空を見上げながら、不思議そうに首を傾げている。だがこんなに晴れているというのに、雨が降るとは到底信じられない。いくら「山の天気が変わりやすい」ってよく言われるはいえ──
*
「ねぇ、ちょっと空が暗くなってない?」
「ホントですね。一雨来そうです」
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