ちいさなしまのおはなし
てんしさまのおはなし
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兄ちゃんが大好きなのである。
お兄ちゃんが自分を庇って、お母さんの怒りをヒカリに向けないようにすることがよくあるのを、ちゃんと知っているのである。
だからお兄ちゃんが頑張って“お兄ちゃん”をやっているのを、邪魔したくない。
幸か不幸か、ヒカリと同い年のお友達は、2人ともヒカリと同じ立場だ。
大輔も賢も、お兄ちゃんとお姉ちゃんの大変さを分かっているから、どうしても口を挟めない。
太一達があっちに行くぞって言ったら、黙ってついていくことしかできない。
だが、その太一達は、今いない。
大輔も賢も、そのパートナー達も、何処にもいないのである。
プロットモンしかいないのである。
黙っていれば、あっちに行くぞって引っ張ってくれる上級生達がいない今、ヒカリが自分の意志で行くところを決めて、自分だけで上級生達を探さなければならないのである。
今までずっとついていくだけだった自分に、そんなことが出来るのだろうか、ってヒカリちゃんは不安で不安で仕方がなかった。
『……ヒカリ、大丈夫?』
は、と我に返ってヒカリは足元にいるプロットモンを見下ろす。
急に立ち止まって黙り込んでしまったパートナーを心配して、プロットモンが声をかけてきたのだ。
自分は、1人ではない。ここに来た時からずーっと一緒にいてくれた、パートナーがいるではないか。
そのことを思いだしたヒカリは、先ほどまでの不安が嘘みたいに何処かに消えてしまった。
ぶんぶん、と嫌な考えを振り払うように頭を振って、頬を軽く叩いて、切り替える。
きっとお兄ちゃんや、大輔くん達も、ヒカリを探して歩き回っているに違いない。
他の人達を探し回っているに違いない。
自分もやらなければ、誰かが見つけてくれるのを待っているだけでは、ダメだ。
こういう時ぐらい、自分から動かなければ。
心配してくれたプロットモンを見下ろして、ごめんね、大丈夫、早く行こうって返して、ヒカリは歩き出そうとした。
ガサリ
近くの茂みで、葉っぱがこすれ合う音がした。
ギクリ、とヒカリとプロットモンの足が止まる。
ガサリ、ガサリ
風は吹いていない。だから何かがその茂みを刺激しない限り、葉がこすれ合って音を立てるはずがない。
ぎ、ぎ、ぎ、と錆びたロボットみたいにぎこちない動きで、2人は音がした方に顔を向ける。
ガサリ
再び音がした。ひ、と引きつったような音が、ヒカリの喉の奥から零れた。
どうしよう、何だろう。
ヒカリとプロットモンの心臓がバクバクと激しく波打つ。
「だっ、誰……?誰かいるの?」
ヒカリは声をかけたが、返事はなかった。
気のせい、ということはないだろう。
ヒカリだけでなくプロットモンも気づいたし、そもそもプロットモンの表情が険しい。
恐らく
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