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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
てんしさまのおはなし
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頼れる人がいない、というのは、妹として守られるのが当たり前のヒカリにとっては、かなりきつい状況だ。
あの時みたいに、ヌメモン達に追いかけられてお兄ちゃん達とはぐれちゃった時みたいに、大輔くんや賢くんが一緒だったらよかったのに。
状況としては、あの時とほぼ似ていた。
大輔とブイモン、賢とパタモンがいないだけだ。
あの時はヌメモンから逃れるためにバラバラになったのだが、今回は違う。
ヒカリは、立ち止まった。ぎゅ、と胸の前で両手を組む。昨夜のことを思い出す。
空を駈けるベッドから見下ろした先にいたのは、闇を凝縮させたような存在感を放っている悪魔だった。
デビモン、という名のデジモンで、普段はムゲンマウンテンに籠っているらしい。
どうしてそのデビモンがヒカリ達の前に姿を現して、ヒカリ達を困らせるようなことをしたのか、ヒカリには分からない。
ただ、ムゲンマウンテンで感じたものと、お屋敷の外で感じたものと、全く同じ気配をしていたことだけは分かった。
あれは、あの時の恐ろしい気配は、デビモンだったのだ。
自分達をずっと見ていたのだ、あの恐ろしい気配を隠そうともせずに。
過保護でサッカー上手なお兄ちゃんのお陰で、ヒカリは自分に向けられる敵意や悪意に少しだけ鈍感になっていた。
だから、デビモンが自分達に対して向けてきた、剥き出しの悪意の理由が、どうしても分からなかった。

──あれが、ゲンナイさんが言っていた“闇”なのかな。

ふるり、とヒカリは総毛立った。
ゲンナイさんに、この世界を救ってほしいって頼まれて、他のみんなもそれしか帰る方法がないのならってそれを引き受けた。
まだ最年少のヒカリ達は、ついていくことしか許されない。
頼れる人がいない太一達にとって、ヒカリ達最年少は最後の砦だ。
何があっても守らなければならない存在だ。
ヒカリ達を守ることによって、彼らの心を保ち、守ることにも繋がるのである。
まだ2年生で、1年生に対しても“年下のお友達”という感覚が強いヒカリは、しかし身近で“兄”として奮闘している太一をよく見ているから、それをよく理解していた。
太一は悪くないのに、太一が目を離した隙にヒカリが怪我をすると、怒られるのは太一なのだ。
ちがうよ、おにいちゃんはわるくないの、ってヒカリは一生懸命お母さんに言って、お兄ちゃんを庇うけれど、お母さんが聞いてくれた試しは1度もなかった。
お兄ちゃんが好きなのは分かるけど、って頓珍漢なことを言って、ヒカリを叱ってくれないのである。
違うのに、お兄ちゃんは悪くないのに。
これでヒカリちゃんが、嫌なことをぜーんぶお兄ちゃんに押し付けて、お母さんの後ろであっかんべーってする女の子だったら、きっと2人の仲は険悪なものになっていただろう。
だがヒカリは周りをよく見る子である。お
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