人と希望 前編
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口からブレスを放つティオス。シリルはそれをあっさりと弾いてみせた。
「すごいよシリル〜!!」
「いける!!いけるわ!!」
魔力による差はない。むしろ押しているとさえ言えるであろう戦いにセシリーとシャルルが手を取り喜びあっている。
「これは・・・なんなんだ・・・」
対するティオスはいまだにボヤけている視界にさらに苛立ちを募らせていく。
「竜魔の咆哮!!」
「!!」
その隙をついたシリルの攻撃が、青年を瞬く間に飲み込んだ。
「なんだ?ティオスの力が落ち始めている」
その姿を見ていた天界でも、この状況に困惑していた。たった一人を除いて。
「やっぱりね。ティオスの肉体が限界を越えたんだわ」
「限界?」
「どういうこと?ヨザイネ」
少女の言葉に首を傾げるドラゴンたち。彼女は振り返ると、彼らの問いに静かに答える。
「人間は短時間で約3分の1血液を失うと死に至ると言われているわ。そしてそれを回復させるには多くの時間を要する」
「それって・・・」
地上の青年は片腕を失い、大量に血を流している。それも二度もそれを行っているため、失血量は明らかに度を越しているのだ。
「今までティオスに多くの魔導士たちが立ち向かっていったわ。彼らは皆破れていったけど、それは決して無駄ではなかったのよ」
グラシアンやカミューニ、カグラやラクサスといった強大な敵へと怯むことなく向かっていった仲間たち。彼らは誰一人として男を倒すことはできなかった。しかし、それはここで花開くこととなる。
「みんなが与えてくれたダメージ・・・それによりティオスはいつ事切れてもおかしくないところまで来てる!!」
いくつもの戦いを乗り越えてきたティオス・・・しかし、彼は自らの力を過信しすぎていた。一度も破れたことがなかっただけに、全員を容易く倒し続けてきたゆえに、自らの肉体を鑑みることをしなかった。
「そしてシリルはみんなの魔力を宿している!!全員の力で、彼を討つのよ!!」
「まだだ!!まだ終われない!!」
シリルの魔法を振り払い、なおも向かっていくティオス。その速度はどの魔導士よりも上であることは間違いない。だが・・・
「ヤァァァァァ!!」
全員の思いを背負った少年の前に、それは通じることはなかった。
「そんな・・・バカな・・・」
ぐらつく視界・・・今にも止まりそうな心臓・・・体が水分を欲しているのがよくわかる。
(負けるのか・・・こいつらに・・・)
「んん・・・」
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