ターン29 雷鳴瞬く太古の鼓動
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んだけどなあ……はっきり言って、前の方がよっぽど強かったんじゃないのかい」
前の時、とは言わずもなが、以前の卓上デュエルで兜が見せた布陣のことである。1度きりとはいえ戦闘、効果両方に対応した破壊耐性持ちの究極伝導恐獣に相手の2体以上の展開を封じるカイザーコロシアム、極め付きにデモンズ・チェーンまで伏せてあったあの時の盤面に比べれば、一概には言えないもののこの状態ですら見劣りすると取られても仕方がないか。
しかしそう言われてなお、兜は胸を張った。変わってしまった目の前の青年に、伸ばした指を突きつける。
「確かに、そうかもしれない。しかし、これが今の私の誇りなのだ。そしてそれを私に教えてくれたのは、ほかならぬ君だ」
「誇り?俺が?」
ほんのわずかに、表情が動いた。不愉快そうな問い返しに、力を込めて大きく頷く。
「ああ、そうだとも。以前君と戦った時の私は、真に相手のことを見ていなかった。自分のターンの展開だけですべてを完結させ、相手を見て動くという勝負としての基本を見失っていた。相手に返せない布陣というものは、いざ返された際に脆い。それを補強するためにさらに強度を上げ、拘束度を上げ、またそれが突破され……その終わらない繰り返し、いたちごっこに何の意味がある?私はあの布陣を、絶対に返せない構えとして張り巡らせた。だが知っての通り、君はそれを打ち破った。あの時、私は思い知ったよ。『絶対』などというものは存在しない」
「それで、『妥協』したと?物わかり良さそうな言葉でごまかして、ただ諦めただけじゃないのか」
「そうじゃない。相手を、そして観客を楽しませるエンタメデュエルという概念を教えてくれたのは、ほかならぬ君だ。目の前の相手を見ずに自分とだけ向き合って、独りよがりに高みだけを目指す……私はそれまで囚われていた芸術作品としてのデュエルよりも、君のような戦い方を極めたいと思った。君の話術や演出のような技術は到底一朝一夕に身につくものではないが、私の心構えは変わったんだ。先ほど披露したこの究極伝導恐獣の口上だが……なるほどいざ口にするとなると少し照れ臭いが、確かにこれは気持ちのいいものだ」
年甲斐もなく朗らかに笑う兜に……しかし鳥居は、その冷たい視線を和らげることはなかった。
「言いたいことはそれだけか?なら、改めて教えてやろう。兜大山、あなたは……あの時よりも弱くなったという、歴然とした事実を!俺のターン、ドロー!スケール1の魔界劇団−デビル・ヒールとスケール8の魔界劇団−ファンキー・コメディアンを、それぞれレフト、ライトPスケールにセッティング!」
「やはり、【魔界劇団】……!トラップ発動、アーティファクトの神智。このカードの効果により、私はデッキからアーティファクト1体を特殊召喚する。レベル5、ア
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