ターン29 雷鳴瞬く太古の鼓動
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にもサンプルが転がっていたとは……ったく、もう少し早く知っていたら、あの廃図書館事件の時も少しは楽にことが進んでいたのかね?」
「精霊の……?私の、究極伝導恐獣が?」
余りに常軌を逸した話の内容に呆然とオウム返しに呟いて視線を上に向けると、同じく兜を見下ろす恐獣と視線が合った。思わず頭を下げると、その強面にはまるで似合わない、子犬かなにかを思わせる動きで同じように会釈を返してくる。先ほどから到底信じがたいことばかり起きているが、どうやらこれも紛れもない現実なようだとは信じざるを得なかった。
そしてその現実が頭に染みていくにつれ、驚愕に代わりじわじわと浮かび上がってきたのは喜び。精霊のカード、デュエリストならば誰もが1度は夢見て、そして大人としての常識がいつしか埋もれさせて消えていく稚気じみた憧れ。それが今、自分のような中年の前にいる。兜がこの究極伝導恐獣のカードを手に入れたのは、デュエル産業が凋落したのとほぼ同じ時期のことだ。つまりこのカードは購入以来、この瞬間までただの1度たりともソリッドビジョンに投影されたことがない。
そんなに前からずっと、私のことを見ていてくれたのか。私は君の声に、気が付けなかったというのに。
「君に何があったのか、私にはわからない。だが私はこの勝負、なんとしても勝たせてもらう。それが、この究極伝導恐獣へのせめてもの誠意だ!手札から、ネメシス・コリドーの効果を発動!除外されているミセラサウルスをデッキに戻し、このカードを特殊召喚する」
「ネメシス……?」
ネメシス・コリドー 攻1900
緑色の竜巻が吹き上がり、全身が緑色の鳥人のようなモンスターが降りたつ。しかしその体は即座に、天井から落ちてきた雷に打ち据えられた。
「雷族モンスター、つまりネメシス・コリドーが効果を発動したターン、私の場から雷族の効果モンスターをリリースすることでこのカードはエクストラデッキから特殊召喚できる。融合召喚……超雷龍−サンダー・ドラゴン!」
超雷龍−サンダー・ドラゴン 攻2600
雷に打たれたネメシス・コリドーが、そのまばゆい光の中でべきべきと音を立てて巨大化していく。両腕は退化して巨大な翼となり、その体色は緑から暗い藍色へ。両足もひとつに退化しさらに長くうねり、いつしかその体は雷を全身に纏う文字通りの龍となっていた。
「サーチ封じと破壊耐性の龍か……面倒だな」
「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」
手札を1枚のみ残した状態でターンを渡す。ただ立っているだけであらゆるサーチ行為を封じる超雷龍に純粋な攻撃力も相まって単体での制圧力がずば抜けた究極伝導恐獣の並びは、確かに強力なものだ……しかし鳥居はその盤面を改めて眺め、カードを引く前にふっと鼻で笑った。
「確かに面倒ではある
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