暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン29 雷鳴瞬く太古の鼓動
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この書斎の床は一面、彼自身が金に糸目もつけずに買ってきて敷き詰めた毛の長い絨毯が覆っており、誰が歩いても足音など響かない。そのせいもあってここまで気が付かなかったが、締め切られたはずのこの部屋に誰か自分以外の人間がいる。視界の端に映った人間の脚に背筋を凍らせながら、恐る恐る視線を上に。その顔を見た時の衝撃は、困惑と安堵のどちらが大きかったのか。彼自身にもよく分からなかった。

「君は……!」
「久しぶりですね、と言いたいところですが。前振りは抜きにして、ビジネスの話をしましょう」

 そこにいたのは今まさに思い返していた青年、鳥居浄瑠。だが真っ先に目についたのは、そのどこか異様な風体だった。両腕や服の下からわずかに見える肩口にはすり切れて血の滲んだた包帯が乱雑に巻かれており、片足はうまく動かないのかわずかに全体的な重心をずらしてびっこを引いている。いや、そもそもなぜこの夜更け、密室のはずのこの場所に?
 混乱と酔いが思考にノイズをかけ、うまく考えがまとまらない。そんな流れを断ち切ったのは、ほかならぬ鳥居本人だった。勧めもしないのに向かいに腰かけ、テーブルの上で両手を組む。まっすぐにこちらを見つめる瞳は以前とは比べ物にならないほど狂気的な光を放っており、その恰好と相まって今の彼が明らかに異常な状態にあることをよく物語っていた。

「あなたが先日落札した、この近海での海上プラントの建設。あの権利をこちらに譲っていただきたいのですが」
「な、何を……!?」

 海上プラントの建設。確かに兜には身に覚えがある話であり、新しく大口の契約を結んだことでますます事業も安泰になると祝杯を挙げた記憶も新しい。頭の中を回転するたくさんの疑問よりもまず先に口をついて出たのは、1代にして成りあがった彼の矜持であり、社長としての言葉だった。

「……ふざけないでもらおう。何が目的かは知らないが、あれはわが社にとっても計り知れない価値がある」

 みるみるうちに冷酷になってきた視線に貫かれながら、きっぱりと拒絶の言葉を吐く。同時に机の下へとなるべく手を這わせ、裏側に密かに設置した警報ボタンを強く押す。ここからはなんの音も聞こえないが、これで警備室へと緊急連絡が入ったはずだ。すぐに、常駐の警備員が駆け付けてくれるだろう。後はそれまで、自分が時間を稼ぎさえすればいい。覚悟を決めた彼の眼のまえに、どさりと音を立ててひとつの機械が置かれた。その形状を、彼はよく知っている。

「デュエルディスク……!?」
「そう言うだろうと思って、最初から準備はしてきた。もう1度拒否するというのなら、俺とのデュエルで決めてもらう。警告しておくが、無論『BV』は組み込まれている」
「だ、だが、君はデュエルポリスなんだろう?こんな行為を取り締まるのが仕事のはずでは」

 震
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