暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン29 雷鳴瞬く太古の鼓動
[12/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 翌日。最初に通報を受けた地元警察からの連絡によって共同捜査に駆り出された糸巻は、当然のように朝から荒れていた。基本的に彼女の人柄やその口の悪さは割と広くに知れ渡っているので、あちこちの壊れた調度品や床に散らばったカードを注意深く調べている鑑識の人たちもいちいち反応したりはしない。せいぜいまたか、といった呆れ半分、いつもの調子なことに安心半分の視線を時折送るぐらいのものである。

「(だいたいなあ、兜建設ってのがもうアレなんだよ。裏デュエルコロシアムんときのこと考えると絶対碌なことにならないっつーか、下手に首突っ込むと面倒事に巻き込まれるのが目に見えてんだよなぁ)」

 これは心の中でだけぼやく。いつぞやの裏デュエルコロシアムの件については彼女も表沙汰にはしておらず、ここの社長が裏のデュエル界隈と繋がりがあることもここにいる連中に知られてはいない。そのまま顎に手を当て、しばし思考にふける。

「(だがわからねえのは、なんでこのタイミングでこのオッサンが襲われる必要があった?鳥居の奴を参加させたことへの粛清……の線は、ないだろうな。巴はあの時鳥居の存在を逆利用してやがったぐらいだし、粛清にしちゃタイミングも遅すぎる)」

 迷惑そうな鑑識の姿も目に入らずに部屋の中をうろうろと歩き回っていると、吹き飛ばされてひっくり返った重そうな机の脚に何かが挟まっているのが偶然目についた。軽く振り返るが、鑑識はこの存在に気づいてはいないらしい。好奇心に突き動かされ、その布の切れ端を強引に引っこ抜く。目を細めるまでもなく、その正体は想像がついた。

「破れた包帯……?それに、ここは兜建設……ちっ、嫌な予感がするな」
「糸巻さん、少しいいですか」
「あー?」

 最悪の想像が徐々に形になってきたところで、後ろから馴染みの鑑識に声を掛けられた。まだ若いが、よく気が付く男である。

「おう、どうしたい」
「部屋の奥から衝撃で吹き飛ばされたんじゃない、明らかに人為的にこじ開けられた金庫が見つかりまして。今被害者の秘書って人を呼んできてますので、何が盗まれたかわかりそうですよ」
「そうか、ならアタシも同席しよう。いいよな?」
「でなきゃ呼びませんよ……あ、今行きます先輩」

 部屋の隅、くだんの金庫の前で早く来いと手招きされ、慌てて近寄る。年配の鑑識が半開きの扉を開き、残った書類を慎重に取り出してスーツ姿の秘書がそれに目を通す。1枚また1枚とめくるにつれて、その顔が徐々に青くなっていく。

「な、ないです!ありません!」
「落ち着いてください、一体何がなくなってるんです?」
「うちの社長が先日取ってきた、海上プラント建設の資料や権利書が、全部なくなってます!」
「海上プラント、ねえ……」

 しかめっ面のまま、糸巻が誰に言うで
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ