最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
最終話 旅はこれから
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また世界地理の本を書くんでしょ。いっぱい旅して、ネタをあげないとね」
デュラは、ペザルから贈られていた『山神様』の称号を返上。
ソラトや子どもたちと一緒に、もっと積極的に山から出て、人間と触れ合う機会を増やすようにする方針にしたらしい。
伝説になるのではなく、現実で居続けること。それが大魔王との約束を果たす第一歩――そう夫婦で結論を出したようだ。
ゆくゆくはアルテアの民を招いて交流することも考えているとか。
赤髪の青年アランは『死霊還帰の魔法を広める旅』に出た。
今は大陸のどこかを旅していることだろう。
「そういうことで、ティア」
ティアに一度話しかけてから、シドウはチラッと少しだけ受付の女性を見た。
受付の女性が、拳を握って応える。
そしてまたティアへと顔を戻す。
「ティア。この町のこの場所で言うのがいいかなって思ったから、言うけど」
「何?」
聞き返したティアの前で、シドウは息を吸い込む。
大きく、肋骨に痛みが走るほど吸い込む。
そして目をつぶり、ティアに向かって力の限り叫んだ。
「お・れ・とっ!! けっ・こ・ん・し・て・く・だ・さ・いっ!!」
あまりの声の大きさと、その内容。
待合室の歓談がピタリとやんだ。動きも固まる。
時がとまったかのような静寂となった。
「は? え? ちょっと、何!?」
あっけにとられるティア。
「いや、俺のほうからきちんと言わないとって――」
「なにもそんな大きな声で言うことないでしょ! あっちに丸聞こえじゃないの!!」
ティアの抗議に、横から受付の女性の声が挟まった。
「ティアちゃん、いちおう返事はしてあげてね。たぶん今のは一世一代の大声だったと思うから」
顔は二人とも赤いが、より濃度が高いのはシドウのほうである。
うつむき、亜麻色の髪を?きながら審判を待つ。
やがてティアが口を開いた。
「……じゃあシドウ、顔上げて」
シドウが茹で蛸のような顔を上げる。
「はい、こちらこそよろしくお願いしますっ!」
こちらは大声ではないが、満面の笑顔とビンタ付きだった。
頬を張られたシドウが吹き飛んでカウンターにぶつかると、待合室の冒険者が一人、口笛を吹いて静寂を破る。
ギルド内は爆発するような拍手喝采となった。
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