最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
最終話 旅はこれから
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
見上げれば、青い空。
風には森の匂いが混ざっていて、どこまでも爽やかだった。
久々に寄った、森の町チェスター。
シドウとティアは冒険者として受けた仕事を終え、ギルドを目指して町の大通りを歩く。
「シドウ、なんか歩くの速くない? もうちょっとゆっくり」
彼女が背負っているのは、大剣。大魔王から貰ったものだ。
明らかにその重さに体力を吸い取られているらしく、仕事後の足取りはしんどそうだった。
気づいていながらもつい速度があがってしまっていたシドウは、ごめんと謝る。
「いまさらだけど、剣士転向って少し無理があったんじゃないかな」
「大丈夫! というか転向じゃなくて、どっちもやれるようになるの」
「武闘家と剣士の両立なんて不可能だって、どこかで聞いた気がするけど」
「いいの! 頑張りまくってそんな定説覆してやるから!」
冒険者ギルドに到着すると、相変わらず待合室には二十人ほどの冒険者が溜まっていた。
シドウはティアとともに、仕事を終えたことを受付の若い女性に報告した。
前に来たときと同じ女性だ。
「あら、やっぱり仕事が早い。さすが」
「ありがとうございます。あ、これ、ペザルに送ってほしいんですが」
「手紙ね? わかったわ」
受付の女性に封書を手渡した。師匠宛である。
それをティアが関心したように見つめる。
「シドウ、あんたマメだよねー。偉い」
「約束、だからね」
師匠だけでなく、亡き大魔王との――。
シドウはそう付け足したのは内心でだが、ティアには伝わっているはずだ。
グレブド・ヘルでの一件については、ダラムの王城や冒険者ギルドなど、しかるべき機関に報告を終えている。
師匠にも子細を報告し、アルテアの民については彼が学術報告としてまとめている最中である。近いうちに世界にその実態が広まることになる。
まず広く知ってもらうことが必要。知らないから恐れられる。
非常に大きなことだとシドウは確信していた。
まだ今はただのモンスター扱いである他の知的生物たちのことも、地上の大部分で連鎖の頂点に立つ人間が正しく理解する時代になればいい。
そうすれば、まだ自分を含め八人しかいないドラゴンの血を引く者≠フ居場所も、おのずと確立されてくるのかもしれない。
自分は人間であり、人間以外でもある。旧魔王軍の公用語もわかる。知的なモンスターのほとんどと会話が可能。それを生かさない手はない。
これからも旅を続け、いろいろなものを見て、考え、それを世界に還元していく。
自分だから見えるものもきっとあるだろう。
「父さんも母さんも張り切っていたし、アランさんも今ごろ頑張っていると思うから。俺たちも頑張ろう」
「そうね。あんたの師匠、
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ