最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第53話 大魔王が見た夢
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
の持ってるモノとか、そういうやつでね! わたしここにいる人たちと違って、すっごい普通の人間だから!」
「いいだろう」
大魔王は大剣を持ち上げ、ティアに放り投げた。
「わっ。ちょっと! これ別の意味で重いでしょ! 振れないよ!?」
受け取ってその重さにバランスを崩したティアの抗議。
大魔王はそれに直接答えず、手のひらだけを向けた。
「あれ? 少しだけ軽くなった! まだ重いけど!」
「重いだろうが適応するがいい。女だから不可能か?」
「あ、もしかしてバカにしてる? できますよーだ!」
若干その重さでフラフラしながらも、ティアは大剣を両手で一度持ち上げた。
大魔王がやっていたように、体の前で床に立てるようにして両手で持つ。大魔王との体の大きさの差のせいか、やたら大剣が大きく見えた。
大魔王はそこまでを見届けると、アランに話しかけた。
「赤髪の人間よ」
「はい」
「余は一度しか魔法を見せることができない。それでもよいか」
「私は今まで一度見て覚えられなかった魔法はありません。どうかご安心を」
大魔王は「そうか」と満足そうに言うと、もう一度全員の顔を見た。
それぞれが、目で、返事をした。そして、その時を待った。
大魔王は静かに詠唱した。
「死霊還帰」
大魔王の体、白骨の体が、光った。
身に着けている防具ごと、同じ光に包まれていく。
目に刺さるようなまぶしい光ではなかった。
限りなく穏やかで、優しく輝く、白黄色の光だった。
「さらばだ――」
大魔王の体が、光の塊となる。
その塊から、光の泡が少しずつ空へと昇っていく。
一同が見守るなか、大魔王は薄暮の光景に溶け、消滅していった。
灰すらも残らず、完全に。
デュラの目から、橙色に光る雫が一滴、落ちた。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ