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自然地理ドラゴン
最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第53話 大魔王が見た夢
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の持ってるモノとか、そういうやつでね! わたしここにいる人たちと違って、すっごい普通の人間だから!」
「いいだろう」

 大魔王は大剣を持ち上げ、ティアに放り投げた。

「わっ。ちょっと! これ別の意味で重いでしょ! 振れないよ!?」

 受け取ってその重さにバランスを崩したティアの抗議。
 大魔王はそれに直接答えず、手のひらだけを向けた。

「あれ? 少しだけ軽くなった! まだ重いけど!」
「重いだろうが適応するがいい。女だから不可能か?」
「あ、もしかしてバカにしてる? できますよーだ!」

 若干その重さでフラフラしながらも、ティアは大剣を両手で一度持ち上げた。
 大魔王がやっていたように、体の前で床に立てるようにして両手で持つ。大魔王との体の大きさの差のせいか、やたら大剣が大きく見えた。
 大魔王はそこまでを見届けると、アランに話しかけた。

「赤髪の人間よ」
「はい」
「余は一度しか魔法を見せることができない。それでもよいか」
「私は今まで一度見て覚えられなかった魔法はありません。どうかご安心を」

 大魔王は「そうか」と満足そうに言うと、もう一度全員の顔を見た。
 それぞれが、目で、返事をした。そして、その時を待った。

 大魔王は静かに詠唱した。

死霊還帰(ターン・アンデッド)

 大魔王の体、白骨の体が、光った。

 身に着けている防具ごと、同じ光に包まれていく。
 目に刺さるようなまぶしい光ではなかった。
 限りなく穏やかで、優しく輝く、白黄色の光だった。

「さらばだ――」

 大魔王の体が、光の塊となる。
 その塊から、光の泡が少しずつ空へと昇っていく。

 一同が見守るなか、大魔王は薄暮の光景に溶け、消滅していった。
 灰すらも残らず、完全に。

 デュラの目から、橙色に光る雫が一滴、落ちた。
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