最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第53話 大魔王が見た夢
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、穏やかな黒い眼窩をデュラとソラトに向け、そしてシドウに向けた。
「お前がダヴィドレイと違う点はどこだ?」
自分の前の二者を見てから聞いてきたので、シドウはその仕草も加味して考えた。
驚くほどすんなりと答えが出た。
「ここまできちんと愛情を受けて育っているという点でしょうか」
夕日を背に「そうだな」と首肯する大魔王の顔は、シドウの回答に満足しているように見えた。
アンデッドなので表情などないはずなのだが、景色同様に柔らかった。
「族長の娘よ、つがいの人間よ、そしてその子よ。余はお前たちに使命を授けたい。人間だけでなく、すべての知的種族がこの世界の美しさに等しく手を伸ばせる――。そんな時代が来るよう尽力してほしい」
「はい。一生をかけて」
デュラが頭を下げてそう答えると、シドウとソラトも力強くうなずいた。
いよいよ日が沈もうとしていた。
大魔王は「さて」と前置きした。
「では、余の最後の役割を果たしたい」
最後。
この場にいる全員が、その言葉の意味を察した。
それぞれがうなずく。大魔王を敬愛していたデュラも。
「お前たちは、アンデッドは粉々にすれば消滅すると思っているのだろう?」
「ということは、違うのですね」
聞き返したシドウに、大魔王は落ち着いて答えた。
「違う。砕き灰にしても本当の意味で地に還ることはない。そしてその魂も空には還らず、漂い続ける。何年、何十年、何百年、何千年と経って、再びアンデッドとして復活する」
それは、世界で誰も知らないであろう事実だった。
「アンデッドは余が魔法でこの世に生み出したものだ……。生み出したということは、当然それを消す魔法も知っている」
大魔王の頭蓋骨の眼窩から、これまでとはやや異質の闇が醸し出された。
「この中でもっとも魔力のある者は……お前か」
大魔王の目が、赤髪の青年アランで止まった。
「ほう、見事な魔力を感じる。生前に出会えたならば部下に欲しかったくらいだ」
「ご慧眼恐れ入ります」
「本来は余の仕事なのだろうが、それがかなわぬ。これも使命としてお前に授けたい」
「大魔王の頼みとあっては断れませんね」
使命の詳細を大魔王は言わなかったが、アランも聞き返さない。
大魔王は一言、「感謝する」と言った。
そして持っていた大剣をバルコニーの床に立て、柄を両手で握った。
「あ、ちょっと待って大魔王。わたしにも記念に何かちょうだい」
これはティアの声だった。
大魔王も意外だったのだろう。口がほんのわずかに開いた。
「面白い人間だな。大魔王の余に命令するか」
「そうよ? いいでしょ? あ、使命だとかそういう重いのじゃなくて、あんた
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ