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自然地理ドラゴン
最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第53話 大魔王が見た夢
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、穏やかな黒い眼窩をデュラとソラトに向け、そしてシドウに向けた。

「お前がダヴィドレイと違う点はどこだ?」

 自分の前の二者を見てから聞いてきたので、シドウはその仕草も加味して考えた。
 驚くほどすんなりと答えが出た。

「ここまできちんと愛情を受けて育っているという点でしょうか」

 夕日を背に「そうだな」と首肯する大魔王の顔は、シドウの回答に満足しているように見えた。
 アンデッドなので表情などないはずなのだが、景色同様に柔らかった。

「族長の娘よ、つがいの人間よ、そしてその子よ。余はお前たちに使命を授けたい。人間だけでなく、すべての知的種族がこの世界の美しさに等しく手を伸ばせる――。そんな時代が来るよう尽力してほしい」

「はい。一生をかけて」

 デュラが頭を下げてそう答えると、シドウとソラトも力強くうなずいた。

 いよいよ日が沈もうとしていた。
 大魔王は「さて」と前置きした。

「では、余の最後の役割を果たしたい」

 最後。
 この場にいる全員が、その言葉の意味を察した。
 それぞれがうなずく。大魔王を敬愛していたデュラも。

「お前たちは、アンデッドは粉々にすれば消滅すると思っているのだろう?」
「ということは、違うのですね」

 聞き返したシドウに、大魔王は落ち着いて答えた。

「違う。砕き灰にしても本当の意味で地に還ることはない。そしてその魂も空には還らず、漂い続ける。何年、何十年、何百年、何千年と経って、再びアンデッドとして復活する」

 それは、世界で誰も知らないであろう事実だった。

「アンデッドは余が魔法でこの世に生み出したものだ……。生み出したということは、当然それを消す魔法も知っている」

 大魔王の頭蓋骨の眼窩から、これまでとはやや異質の闇が醸し出された。

「この中でもっとも魔力のある者は……お前か」

 大魔王の目が、赤髪の青年アランで止まった。

「ほう、見事な魔力を感じる。生前に出会えたならば部下に欲しかったくらいだ」
「ご慧眼恐れ入ります」
「本来は余の仕事なのだろうが、それがかなわぬ。これも使命としてお前に授けたい」
「大魔王の頼みとあっては断れませんね」

 使命の詳細を大魔王は言わなかったが、アランも聞き返さない。
 大魔王は一言、「感謝する」と言った。
 そして持っていた大剣をバルコニーの床に立て、柄を両手で握った。

「あ、ちょっと待って大魔王。わたしにも記念に何かちょうだい」

 これはティアの声だった。
 大魔王も意外だったのだろう。口がほんのわずかに開いた。

「面白い人間だな。大魔王の余に命令するか」
「そうよ? いいでしょ? あ、使命だとかそういう重いのじゃなくて、あんた
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