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自然地理ドラゴン
最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第53話 大魔王が見た夢
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そんなソラトに一度目を向け、またデュラに戻した。シドウの目には、大魔王がかすかにうなずいたようにも見えた。

「私はいま、最後の純血ドラゴンとして、恥ずかしながら生きながらえております」

 デュラの説明は限りなく簡潔だった。
 大魔王が死んでから何年経っているのかも、ドラゴン族が誰に滅ぼされたのかも、なぜ自分だけが生きているのかも、今なぜ人間たちと共にこの場にいるのかも、言わなかった。

 大魔王がさらなる説明を求めることもない。
 ただ少しの時間だけ、両者は視線を交わしていた。

「族長の娘よ。余を恨んでいるか?」
「いえ。感謝こそすれ、恨んだことなど一度もございません」

 大魔王は「そうか」と言うと、闇色の眼窩を宙にさまよわせた。
 その後ダヴィドレイの死体を一瞥すると、顔を戻して言った。

「余の部下が失礼したようだな。ダヴィドレイは、我々アルテアの民の者が昔にグレンデルと相思相愛の果てにできた子だ。グレンデルの中で生きていくつもりだったが迫害され、集落を追い出されからは我々アルテアの民の集落で生きてきた。能力は高かったが、肌の色の関係で我々の中でも親しまれる存在ではなかった。そのせいか性格のほうが歪んでしまっていたようだ」

 それはデュラだけでなく、この場にいる全員に向かって説明しているようにシドウには感じた。

「せっかくここまでやってきたのだ。こちらに来るがいい」

 大魔王はそう言うと、シドウたちから見て左側に歩き出す。
 デュラがそれに続くと、他のメンバーもそれに倣った。

 大魔王の間は側部に壁がない。柱が広い間隔で並んでいるだけである。
 そこを抜けると、その外はすぐ空中にはなっておらず、バルコニーとなっていた。

 部屋の大きさ同様、並の大きさではなかった。
 ドラゴンであるデュラがいてもなお、広さに余裕があった。

 バルコニーの一番先に立つ大魔王。
 デュラが大魔王の少し後ろに位置したため、シドウらも大魔王を後ろから見守るような位置で景色を眺めた。

「わあ! 何これ! すごくいい眺めじゃないの!」

 ティアが言ったとおり、薄暮で橙に染められた景色は、絶景の一言に尽きた。
 方角としては北西向きと思われた。手前には気候の厳しいグレブド・ヘルで生き抜いている草原が見え、断崖絶壁の向こうに広がる外の世界も見えた。

 中央には広がる豊かな森と、その向こうには穏やかな海。
 左手にはなだらかな砂漠と点在するオアシス。
 右手には力強い峰と稜線の山脈。
 世界を俯瞰できる、この地の標高が存分に生きた素晴らしい景色だった。

 大魔王は景色に目を向けたまま、一つうなずいた。

「我々アルテアの民は、世界でもっとも美しい景色を見ることができる種族
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