最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第52話 学問の禁忌(2)
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引き抜くと、灰色の血が勢いよく噴き出す。目を見開いたままのダヴィドレイは、そのまま後ろにゆっくりと倒れた。
致命傷を与えたと確信したシドウは、すぐに振り向いた。
そこには、なんとか自力で起き上がったばかりの母親デュラ。
そして――倒れて動かなくなっていた三人。
駆け寄った。
いつのまにかドラゴンの変身も解けていた。
足がもつれた。倒れ込み、倒れている三人の名前を呼びながら、地面を這うように脈を確認して回る。
「みんなまだ生きてる……!」
しかし。
「ど、どうしよう……回復魔法を使える人が……いない……」
三人とも想像以上の深手に見えた。
絶望の表情で母デュラを見上げる。
もちろんデュラも回復魔法は使えない。首を振った。
町に運ぶにも、この三人の状態では運べない。
「お、俺のせいだ……」
自分が油断しなければ。
いや、そもそもこの地に連れてこなければ。
怒涛の後悔が押し寄せてくる。
だから――。
赤髪の青年の手が動いていたことに、気付かなかった。
「シドウくん、諦めてはいけませんよ」
「――!?」
立てないはずの彼が、起き上がっていた。
右肩と腹部に刺さっていた矢はなぜか抜かれており、彼の右手に握られている。血も噴き出ていない。
「名前を呼んでくださってありがとうございます。意識が戻らなかったら回復魔法も使えませんでしたので」
「え? アランさん、たしか回復魔法は――」
苦手で、ほとんど実用にはならない。マーシアの町で行動を共にしていたときに、そう聞いていた。
そもそも、火・水・風などの通常の魔法と回復魔法は相性が悪く、どちらも覚えるというのは困難。それが定説だ。
驚き混乱するシドウをよそに、アランはソラトとティアの二人の傷を確認した。
「シドウくん、ちょっと手伝ってください」
より重傷と思われたソラトの治療から開始となった。
臓器まで達しているであろう深々と刺さった矢を、シドウが指示に従いゆっくりと引き抜きながら、アランが回復魔法をかけていく。失血をできるだけ抑えるやり方だ。
「アランさん、もしかして本当は、回復魔法……得意だったり?」
「種族の壁は越えられないかもしれませんが、人間が勝手に作った壁なら越えられるようですよ」
子供のころに故郷を滅ぼされたことで燃やした、強い怒りの炎。それは彼を無理やり成長させ続け、ついには定説を打ち破り、通常の魔法と回復魔法のどちらも熟練させるに至ったのだ。
瘢痕すらほとんど残さない回復魔法は、見事という他なかった。
「あれ、僕、もしかして気絶してた?」
「ソラトっ」
「いたたた! デュラ、それ前から言ってるけど痛いって」
「あ
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