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自然地理ドラゴン
最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第52話 学問の禁忌(2)
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うには見えない。

 命中した瞬間に大爆発した魔法。
 至近距離で放った本人すらも巻き込みそうなほどの威力だったが、ダヴィドレイは涼しげな顔を崩さなかった。

「ドラゴンは丈夫な生き物だが……そう何発も耐えられまい」

 母親への追撃は許すまいと、シドウも攻め込んだ。
 だがやはり読まれている。ダヴィドレイは学者だったとは思えないほどの反応の良さで、シドウにも魔法を放つ。

 シドウも炎に包まれ、押し戻された。

 少し前に赤髪の青年アランと対峙したときと同じような衝撃。そして熱さ。
 爆音がシドウの耳から聴覚を一時的に奪う。

 魔法に溜めが少なかった分、母親デュラが受けたダメージよりは少なかったと思われた。
 だが転がりながら聴覚が戻ってきたと思った瞬間、さらなる魔法が飛んできた。
 腹部への衝撃に、体の内部が焼かれるような感覚。

 アランのように床から炎を出したものではないが、腹部を正確に狙われた。学者であったダヴィドレイは、ドラゴンの脆弱な部位も予想はつくのだろう。

 やっとのことで起き上がったシドウの眼前には、すでにとどめの火魔法の発射準備を終えたダヴィドレイの姿。
 まずい。
 そう思ったとき――。

「!?」

 きらめく何か。
 大きな質量を持つ何かが、後ろから飛んできた。

 それはすさまじい速度で空気を斬り、ダヴィドレイの大腿部に深々と刺さった。

 見覚えがあるものだった。
 大魔王が作ったという大剣・エメスである。

「エリファス、まだ生きていたのか」

 ダヴィドレイの声。
 シドウたちの後ろにいたのは、オーガ。エリファスだった。

「さあやれ! ドラゴンの子よ! 不要な存在でないことを証明してみせろ!」

 全力で投げ終えた姿勢を支える力はなかったのだろう。突っ伏した姿勢から上半身だけ起こした状態で、彼はそう叫んだ。

 その緑暗色の巨体は焼けただれ、ところどころ骨も露出しているように見えた。 
 アンデッドと言われても信じたかもしれない。それくらいの損傷ぶりだった。

 しかし目だけは先ほどの錯乱はなく、理知的な光を放っていた。
 激しい肉体の損傷で正気を取り戻していたか。

「この死にぞこないが」

 膝をついたダヴィドレイが大剣を引き抜いて捨て、片膝のまま火球を放つ。
 デュラに放ったもの以上の威力に見えたそれは、エリファスに命中。
 生きているだけでも不思議だったくらいのその肉体は四散し、肉片と化した。

 だが、感情的で明らかに威力過剰な一撃。
 その隙をシドウは逃していなかった。
 エリファスの最後の言葉を受け、一直線に玉座前へと飛んでいた。

 その右の爪は、ダヴィドレイの胸部をとらえた。
 
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