ちいさなしまのおはなし
闇に潜む者
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他の部屋と違って2つ並んだ扉を見つけた太一は、躊躇なく扉を開ける。
先ほどそれで廊下に飾られていた西洋鎧を倒したというのに、全く反省している様子を見せていないが、もはや何を言っても無駄だと分かっている治と空は何も指摘しない。
沈黙は時として恐怖となりうるのだが、特性が鈍感な太一に、果たしてその嫌味が通じるかどうか。
「……ん?」
扉を開ける。壁と垂直になるようにに取り付けられた木の板に、何処かで見たことがあるような籠が6つ鎮座していた。
中は広々としている。棚がある壁とは反対側には、大きな鏡とドライヤー。
角には観葉植物、太一達の正面にはすりガラスの引き戸。
もしかして、と太一は躊躇なく中に入って、すりガラスの引き戸に手をかけ、開ける。
涼しい空気にモザイクのタイル。壁に設置されている、等間隔に並んだシャワーと、僅かに纏わりついてくる湿気は、恋しくてたまらなかったもの。
「お風呂だ!」
「えっ!?」
「本当!?」
中に入らずに様子を伺っていた治と空は、太一のその言葉に反応して部屋に入る。
太一の背後から覗いたすりガラスの引き戸の向こうに広がっていたのは、確かに浴場であった。
「使えるのかしら?」
「やってみりゃ分かるって」
そう言って太一は治とともに浴場に入って、使えるかどうかを確かめた。
まずはシャワー。蛇口を捻れば、お湯も水も問題なく出てくる。
湯舟の方にも蛇口がついており、捻ればお湯が出たのでしばらく放っておいてお湯を貯めておくことにした。
「よし、じゃあ次……ん?アグモン?」
次の部屋を散策しようとした太一だったが、いつも後をついてきているはずの黄色い陰が見当たらない。
何処だ、と辺りを見渡すと、脱衣所の辺りでガブモンとピヨモンと一緒に座り込んで、目を閉じていた。
太一が揺さぶりながら声をかけても、口元をむにゃむにゃさせるだけで、特に反応を見せてくれなかった。
「……どうする?」
進化をしたことにより疲れが眠気に変換されているのだろう。
これではご飯を食べる気力もなさそうだと判断した太一は、治と空に尋ねる。
2人も太一と同意見だったようで、目を閉じて寝る体勢に入っていたアグモン達を何とか引っ張り起こして、脱衣所を出た。
廊下はまだ奥に続いていたが、それよりも役立たずになり下がりかけているアグモン達をどうにかせねば。
寝ぼけ眼で、太一達に引きずられるアグモン達に四苦八苦しながら、エントランスに向かうと、1階の散策を終えたらしい丈と光子郎、ミミがいた。
こちらも似たようなもので、それぞれのパートナーが座り込んでぼんやりしていた。
「もうベッドに放り投げとくか」
「言い方」
ぐったりとしているデジモン達を見ながら、これ以
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