ちいさなしまのおはなし
闇に潜む者
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……もう、その愛らしい光景を拝めることはできないけれど。
だから治は、何も言わずに賢を受け入れてやる。
ガブモンには悪いが、ちょっとだけ詰めて、賢とパタモンがベッドで寝られるようにしてあげて、賢を安心させるように優しい笑顔を浮かべながら、よしよしって頭を撫でてやる。
「……大きくなったなぁ、賢」
ベッドが嫌に狭く感じるのは、きっとガブモンとパタモンもベッドにいるから、だけではない。
最後に、同じベッドで一緒に眠ったのは、いつだっただろうか。昨日のことのようにも思うし、遠い遠い記憶の彼方の出来事だったようにも思う。
だからこそ、ついつい言葉に出してしまったのは、父親が言うようなセリフであった。
「………………」
そんな治と賢の、ほのぼのとした兄弟の空気を、唇を噛みしめながら大輔は眺めていた。
賢だけじゃない、兄の下へ走ってしまったヒカリのことも、じっと見つめて目を離さない。
『……ダイスケ』
ブイモンは大輔の名前を呼ぶことしかできなかった。
ずーっとずーっと待っていた、大好きなパートナー。
嬉しくって嬉しくって、ずーっと引っ付いていた。
自分の弱点を知られてしまった時は、もうダメだって絶望しかけたけれど、大輔は何でもないだろって受け入れてくれて、知る前と変わらない扱いをしてくれた。
それがどんなに嬉しかったか、きっと大輔には分からないだろう。
だからブイモンはますます大輔にべったり引っ付くようになる。
引っ付くようになって、気づいた。
大輔は時々、賢とヒカリを羨ましそうな目で見ていることに。
普段はとっても仲が良くて、上級生達があーでもないこーでもないって頭を捻らせている間も、最年少の3人はお喋りに興じていることが多い。
ブイモン達も仲間に入れてもらって、絆を育みつつある3人だけれど、時々大輔は仲がいいはずの賢とヒカリを、複雑そうな目で見ることがあるのだ。
自分だけ仲間外れ、って顔をする時があるのだ。
そんな時に大輔にどうしたの、って聞いても大輔は答えてくれない。
何でもない、って言って、ぷいって賢やヒカリから目を逸らして、暫くするといつものように賢とヒカリと楽しくお喋りし始める。
せっかく太一達やアグモン達には内緒って、ブイモンとパタモンとプロットモンだけに教えてくれるぐらいには、信頼され始めてきたのに。
大輔のことは何でも知りたいから、どうして仲がいいはずの賢とヒカリを羨ましそうな目で見るのか、教えてほしいのに。
今もそうだ、どうして大輔が賢やヒカリを羨ましそうな目で見ているのか、ブイモンには分からない。
それは、人間にあってデジモンにはない、きっとデジモン達にはある種一生理解できない事柄なのだが、ブイモンがそれを知るのは、もう少し後となるだろう。
「………………」
『…
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