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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
闇に潜む者
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見れば、2人ともベッドから身を起こしていた。
青白い月光で僅かに垣間見えたのは、目を見開いてがちがちに震えている2人の姿だった。
まるで、大輔のように。
え?と思ったのもつかの間、ヒカリはベッドから飛び降りると、彼女がいたベッドから斜め右上、大輔とブイモンがいるベッドの列の1番左端、窓側のベッドに寝ている太一のところへ、一目散に走り出した。
プロットモンが慌てて追いかける。
すっかり眠りこけて、夢の世界を旅しているであろう、大いびきをかきながら芸術的な寝相を披露している兄に遠慮することなく、その腹めがけてダイブをかました。
ぐえ、って蛙が潰れたような悲鳴が聞こえる。

「ヒ、ヒカリィ……兄ちゃん、つぶれちまうよぉ……」

寝ぼけていても、自分の腹にダイブをかましてくる相手が分かっているようで、太一は妹の名を呼んで抗議をする。
だがヒカリは聞いていないのか、太一のベッドによじ登って、兄にしがみつくように掛け布団に潜り込んだ。
おい、って更に太一が抗議をしようとして……口を噤む。

兄のパジャマを掴む、妹の小さな手が、分かりやすいほどに震えていた。

一瞬何が起こったのか理解できなかった太一であったが、一拍遅れて太一のベッドに飛び乗ったプロットモンが困ったような表情を太一に向けて、何となく察した。
何か怖い夢でも見たのだろう、太一はそれ以上文句を言わずに、黙って妹に布団をかけ直し、落ち着かせるように彼女の背中を優しく叩いてやる。
1つのベッドに子ども2人にデジモン2体はなかなかにきつかったが、それでも兄として、縋ってきた妹を振り払うことはできなかった。


それを見ていたらしい賢は、1度掛け布団に視線を落とすと、数秒ほど硬直して、意を決したようにパタモンを抱き上げ、ベッドから降りて左隣にいる兄のベッドによじ登った。
その振動で、眠りについていたはずの治が目を覚まし、ベッドに潜り込んできた弟に気づく。
パタモンをぎゅっと抱きしめながら、治のパジャマを遠慮がちに握る賢の目は、戸惑いと恐怖で見開かれている。
離ればなれになる前と変わっていなければ、これは何か嫌な夢を見た時の反応だ。
両親が別れて、それぞれ引き取られる前、同じ部屋で過ごしていた治と賢。
2段ベッドの上で眠る治お兄ちゃんのお布団に潜り込んで、くすんくすんって堪えるように泣きながら、お兄ちゃんのパジャマを遠慮がちに掴んでくる。
そんな賢を、治はやれやれって思いながらも甘やかしてあげるのだ。
お兄ちゃんがいるから怖くないよって、頭をよしよし撫でてあげるのだ。
そうすると賢は涙目になった目をとろとろさせて、夢の世界に旅立つのである。
翌朝、お母さんが起こしに来ると、幼い兄弟が仲睦まじく同じベッドですやすやと眠っている姿を見ることが出来たのだ。

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