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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
闇に潜む者
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けるとか、ね?」
「……はい」

どうも腑に落ちない、と言った表情を浮かべながらも、これ以上先輩達を困らせたくないヒカリは、意を決したように湯船に入った。





お風呂に入る前に1度外に出て、光子郎のパソコンからテントを取り出し、パジャマを持ってきておいた子ども達は、それに着替えてアグモン達が眠っている寝室へと向かう。
ガチャリ、と扉を開けると、デジモン達の眠りの妨げにならないようにと、ベッド横のランプだけつけていたので、ほんのりと暖かみのあるオレンジ色の灯りが灯っていた。
ゲンナイがくれたテントにベッドが備え付けられていたから、柔らかい布団に包まれて眠れる、というありがたみは薄い。
しかしあちらはマットだけで、こちらにはフレームがあった。
ホテルのベッドのような豪勢な部屋に、子ども達のテンションがちょっとだけ上がる。
しかしパートナー達は既に眠っていて、ベッドに横になっているから、大きな声ではしゃぐのは止めておいた。

「何だか林間学校みたい」
「ふふふ、そうね」

それぞれのパートナーが寝ているベッドに入る。
4年生に上がって、5月ぐらいのころに行ったお泊りのことを思い出したミミは、何となしにそう口にした。
空が同意し、その話は和やかに終わるはずだったのに、余計なことを口にする者というのは何処にでもいる。

「みたいじゃないよ……そもそも僕達はサマーキャンプに来てたんだ。それがどういうわけか……」
「先輩!」

治の鋭い声が、丈のセリフを遮った。
治らしからぬ大きな声に、丈は身じろぎをしたが、すぐにその理由を理解した。
しん、と静まり返った寝室で、丈と治以外の子ども達が俯いている。
はしゃいでいた子ども達の心に、一点の闇が生まれた。
丈の言う通り、彼らはサマーキャンプをしに来ただけなのだ。
みんなそのつもりで家を出て、3日間サマーキャンプを楽しんだら、まったりと家に帰るはずだったのだ。
そしてしばらくの間は、サマーキャンプの話題で持ち切りになって、部活動に参加して汗を流して、お父さんの田舎に行ってお祖父ちゃんお祖母ちゃん親戚の人に逢ってお盆を過ごしたり、近所で行われる夏祭りに参加するためにお母さんに浴衣を買ってもらったり、そうやって毎日毎日遊んで、最終日になって宿題をやるのを忘れたと騒いで、友達と一緒に片づけたり……。
去年と同じように過ごすはずだったのに、今年は違った。
猛吹雪で帰り道が分からなくなり、お堂に避難したらオーロラに導かれるように、この世界にやってきた。
最初は当てもなく彷徨っていたけれど、3日目に立ち寄った工場でアンドロモンに言われるがままに白い機械……デジヴァイスを使えば、立体映像としてゲンナイと名乗る、人間でもデジモンでもない、この世界の安定を望むものが、子ども
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